災害時の公務員は辛いよねって話 ページ1
「定員オーバーです！！！一人降りていただけませんか！？すぐに必ず助けに来ますから！」
若きレスキュー隊員が声を上げる。ヘリコプターに隙間無く詰められた被災者達のざわめきは途端止まった。
この状況で降りろと？皆そう考えた。眼前に広がるのは足などほぼ踏み入れたことの無い屋上。そして迫り来る大きな波。壊れていく建物、流れる大木。
降りれば死ぬ。次の助けを待ってる暇などありはしないだろう。真夜中のようにシンと静まり返り、返事は誰一人としてしない。
「私、降ります。道を開けて貰えませんか」
まだ死ぬには早すぎる、そんな若者が手を挙げた。彼女を知る者は声を上げた。そんな、死にに行くようなものよ、やめなさい。そんな声だ。
彼女に両親はいない、特別仲のいい友人もいない、恋人もいない、遺して行く人はいなかった。
人当たりは良いが、何も無いところを見つめ、独り言の多い、そんな変わった女性。彼女は遺して行く人がいる者を生かそうとしているのだ。
問答無用と言わんばかりにヘリコプターから飛び降りる。ヘリコプターから隊員の必死な呼び掛けが聞こえた。必ず助けに来るから。無理に決まっている。彼は所詮人の子。神でない限りこの状況を打破できる者はいない。
「加州清光」
「な〜に、主」
「この時代のこの日付に大津波が来るなんて歴史ある？」
「こんのすけにも聞いたけど、無いよ。間違いなく奴らの仕業」
切れ長な赤い瞳が細まる。未だ姿を現さない敵を見据えるように。
「さあ、行こうか。加州、仕事の時間だよ」
「加州清光に命ずる。時間遡行軍を殲滅し、歴史を守れ」
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作者名：零磨 | 作成日時：2022年6月24日 21時
