【wrwrd】優しい貴方を指先へ【syp】 (ページ3)

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「由海ちゃん！」

「うわっ」

仲良しの友達に普通に声を掛けようとしたのに、段差につんおめって後ろから飛びつく形になってしまった。友人の手からパックジュースが吹っ飛んでいく。

「ああ！こら！なにしてんの！」

「ご、ごめ、まさかそんなことになるとは思わず‥‥」

「はあ、どうしたん？そんなにバタバタ走ってきて」

友人は慣れきった様子でパックジュースを拾い上げ、ぺしぺしと軽く汚れを払う仕草をする。申し訳なくなりながらも、心の広い友人に感謝しつつ素直に口をひらいた。

「あのさ、由海ちゃんの家って弟くんいるよね？」

「うん？おるけど」

「いま小学5年生よね！？」

「えっ、うん‥‥せやけど‥‥あんたちょっと、紹介してとか言わんよね」

「ええ！言わないよ！！あの‥‥ちょっと相談にのってほしくて」

言葉尻がもじもじとすぼんでいく。
私の様子に訝し気に眉をひそめながら、由海ちゃんはパックジュースにストローを突き刺して口に咥えた。

「相談？」

「私のお父さん再婚したって話したでしょ？それで私、弟ができたの」

「ああ、言ってたなあ。もしかしてその子がうちの弟と同い年なん？」

「うん！全く同じ年ではないんだけど、年が近くて‥‥それで由海ちゃんってどうやって弟に接しているのかなって思って、参考までに教えてほしいの！」

「どうやってって‥‥」

呆れ顔でストローの先を噛む由海ちゃんに対して、私は真剣な表情で回答を待つ。やがて真剣さが伝わったのか、口を離してはあと溜息をついた。

「別になんもないよ。あっちも勝手にやるし、あたしも勝手にやるわ。むしろあっちがもっとあたしの物に気ぃ使えっちゅー話やねん」

「勝手に？」

「あいつ勝手にあたしの部屋に入ってゲーム持ってくわ漫画持ってくわ‥‥聞いてよ、この間なんかあいつあたしの高い化粧水勝手に使いよってん！！彼女ができたとか知らんがな色気付きよって‥‥ほんま‥‥」

「うんと、勝手に物を使わない‥‥と」

「あんた小学生の私物になんの用があんのよ。そんなことせえへんやろ」

「えと‥‥うん、しないかも」

困った。仲良し姉弟とは思ったよりも難しいかもしれない。
眉を下げてメモを握りしめる私に、由海ちゃんはまた溜息をついてぽんぽんと頭を撫でてくれた。

「別に、特別構えていろいろせんでもええんちゃう？あんた、その子にどうやって接するつもりやったんよ」

「ショッピくんに‥‥？」

問いかけられて、メモ帳へ視線を落とす。