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「これ、お姉ちゃんにとってそんなに大切じゃなかったですか？」
「え‥‥タルト？うーん、そんなことないよ。お母さんが買ってきてくれたものだし、わたしタルト好きだし‥‥」
「ふーん‥‥」
どこか納得いかなそうな表情だ。
ショッピくんは皿を手に持っておもむろに立ち上がった。そのまま流し台へ皿を置いて、夕飯作りを手伝うと申し出てくれる。
どうしたんだろう、一体。
それからというもの、ショッピくんの様子はなんだかおかしくなっていった。
これまでは私の部屋に入ってきたりすることはなかったのに私の部屋の本や、物を持っていったり、私の私物を触ったりするようになった。それを私に見つかってもなにも言い訳もしない。私も私で、特に触られて困るものもないので、そのままにさせていた。
「ショッピくん、この間わたしの部屋にあった小説おもしろかった？これ、続編がこの間出てね！お休みの日に買いに行ったの！限定版なの！私は後から読むから、先に読んでいいよ！」
「‥‥どうもありがとう」
そんなショッピくんに気を使って声をかけると、ショッピくんは決まってどこか諦めたようなそんな表情をした。いつも大人びたショッピくんが見せる珍しい表情である。
「ショッピくん、そのボールペン良かったらあげるよ。それか新しいの買ってあげる」
「‥‥ええよ、ちょっと借りただけやから」
「そう？」
欲しいのなら、使いたいのなら全部譲ったっていいけれど、ショッピくんは渡そうとすると途端に要らないと言って私へと返してしまう。どうしたらいいだろう。
「ごめんな、Aちゃん。最近、あの子がAちゃんのもの勝手に触っとるよね」
「あ‥‥」
お母さんがどこか難しい顔で私へと声をかけてくれた。今、ショッピくんはお風呂に入っていて、お父さんは残業で少し帰宅が遅れていた。
「あの子には厳しく言っておくから、気ぃ悪くせんでな‥‥」
「え！？そんな！お願い、やめて、大丈夫だから」
「でも‥‥」
大人びたショッピくんが見せてくれる珍しい表情、きっと私になにかしてほしいことがあるんだ。それは私にしか応えられないものなのかもしれない。
「私、困ってなんてないよ。ショッピくんが甘えてくれてるのかなって思ったら、お姉ちゃんとしてこ、光栄？なことだと思うから！」
「‥‥あははっ、光栄って、大げさやなあAちゃん」
ひとしきり笑って、お母さんは眉を下げながら私を撫でてくれる。
「あの子もよろしくね、Aちゃん」
続く (更新停止中)
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作者名：千歳 | 作成日時：2020年3月29日 16時
