【wrwrd】優しい貴方を指先へ【syp】 (ページ12)

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「(あれ‥‥？)」

ショッピくんの手元にあるお皿には、先ほど由海ちゃんたちに話していたあの苺のタルトが置かれていた。つやつやであったであろう苺はすでに食べられて、あと一口ほどしか残っていない。傍らに置かれていた白い箱の中身も空っぽだった。

「どうしたん？お姉ちゃん」
「ショッピくん、そのタルト‥‥」
「これ？冷蔵庫にあって、お腹がすいたから。‥‥もしかしてこれ、お姉ちゃんのでした？」
「う、うん、昨日お母さんにもらったの」
「そうなんですね」

私は青い顔でふらふらとショッピくんに近づく。どうしよう、これ‥‥。

「しょ、ショッピくん‥‥どれ、2つとも食べたの？」
「‥‥はい」

「今日、かつ丼なの‥‥」

「え？」

そのタイミングを見たかのように、ガサ、とスーパーの袋が鳴り、中の豚ロース肉がちらりと覗く。特売だった卵も一緒だ。

「お腹いっぱいじゃない‥‥？結構がっつりめのメニューにしちゃった‥‥これなら軽めの方がいいよね？でもね今日、狙ったように豚ロースと卵が安くて‥‥」

あ、でもショッピくんは育ち盛りだし、これくらいぺろっと食べられたりするんだろうか。男の子の適切な食事量が本当に難しい。最近の私の課題だった。

「‥‥怒らへんの」
「え？どうして？」
「俺、お姉ちゃんの勝手に」
「‥‥あ、そっか確かにちょっと残念かも。楽しみにしてたんだ、それ。ショッピくんと半分こしようと思ってて」
「え‥‥」
「あ」

そうだと手を打って、スーパーの袋をリビングの食卓の上へ置く。ショッピくんの前にかがむと、少しだけぴくりとショッピくんの肩が跳ねた。

「そのひとくち、くれる？そしたら半分こ‥‥までじゃないけど、ショッピくんと食べたことになるし！あーん」
「っ‥‥」

ショッピくんは目を見開いて、かあ、と耳を赤くした。
少しだけ視線を彷徨わせた後に、おそるおそるフォークを差し出してくれる。それに手を添えて、有難く最後の一口をいただいた。

「あ、」
「うん、美味しい！わたし、ケーキの中ではタルトが一番好きなんだけど、ショッピくんも好き？」
「‥‥はあ」
「え？」

深くため息をつかれてしまう。最後の一口をもらってしまったことで気を悪くしてしまったのか。焦る私の表情をじとっと見つめ返して、ショッピくんはフォークを皿に置いた。