わたし8歳、兄13歳 ページ15
お母さんは今日もにこにこ笑っている。
このころ私は自然とお父さん、お兄ちゃんと呼ぶことができるようになっていた。呼ぶたびにお父さんはすごく嬉しそうに笑ってくれる。
お父さんって、呼んだだけなのに。
そうか、お母さんがあんなに泣いて私を叩くくらい欲しかったのはこれなんだと、うっすら私は理解して、今日もお母さんが笑ってくれることに安堵する。
こんなにお父さんと仲良くなれたのは、お母さんが笑ってくれるのは全部お兄ちゃんのお陰だ。
「A、はやくしないと遅れるで」
「待って！」
中学生になってもお兄ちゃんは変わらず私と登校してくれる。というのも、お兄ちゃんの通う中学校は私の小学校のほぼ真向かいにあるのだ。
安心して、私はお兄ちゃんの背中を追うことができた。
「もう、Aったらもうすぐ１０歳になるのに、まだ欝くんにべったりなのね」
「うん！」
だって、こうしていたらお母さんが笑ってくれるのだ。
「‥‥はは、ええんよ。ほら、行くで」
おにいちゃんはへらりと笑って、私の手を取ってくれる。大好きなお兄ちゃん。仲良しの幸せな家族。
ずっとずっと、お母さんが欲しかったもの。
今ならお母さんの気持ちが少し分かる。お兄ちゃんは優しくて、お父さんも暖かい人。大好きな家族。私を叩いてでも欲しかったもの。嬉しい、嬉しいな。
「なぁ、A」
お兄ちゃんが手に力をこめる。ぎゅう、と力の強さが伝わって、不思議に思った私はきょとんとお兄ちゃんを見上げた。
「？ お兄ちゃん？」
「お兄ちゃんのこと、好き？」
このころ、お兄ちゃんは私にこう聞くことが多くなっていた。もちろん、そんなの、決まっている。私はいつものように、にっこり笑みを浮かべて、こう答えるのだ。
「うん、Aお兄ちゃんだいすき！」
そうすると、お兄ちゃんはふっと力を抜くように笑って、私の手を離す。
「今日は部活で遅くなるから、先に帰ってな」
「うん！いってきます、お兄ちゃん」
手を振りながら校門を抜けていく私の背中を、お兄ちゃんは見送ってくれる。その視線に含むものはなんなのかだなんて、この頃の私が知るよしもない。
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千歳(プロフ) - めぅか。さん» 初めまして！はい、全くもって無関係です。そちらを意識した訳では無くこの単語の意味合いを持たせたお話のため付けられたタイトルです。ご理解賜りますようお願い申し上げます。最後まで読んでくださりありがとうございました！ (2020年4月9日 21時) (
レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - ゆうかさん» 私もしんどい思いをしながら書いておりました…自分で書いておいて「救いはないんですか！！」って感じです…一緒に見守ってくださりありがとうございました！私もrbrさんすごく好青年に書けたな…としたり顔してます！ (2020年4月9日 21時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - まもやろたおさん» ありがとうございます・・なんとか完結に漕ぎ着けました・・・！ (2020年4月9日 21時) (レス) id: f6f8db44cb (このIDを非表示/違反報告)
めぅか。 - あの、これのタイトルってま/ふ/ま/ふ/様の曲と同じではありませんか？不快な思いをされる方もいらっしゃるのでは無いでしょうか？作者様はそういうつもりがないのは重々承知しておりますが一応言わせていただいときます。作品としてはとっっっっても好きです！ (2020年4月8日 22時) (レス) id: aacdd32f14 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - しんどい……(；；)こういう自己犠牲だったり屑だったりするお話好きなので、辛いけど最高でした……登場人物の感情がまっすぐに伝わってきて、凄く感情移入出来ました。すごい……完結おめでとうございます、お疲れ様でした！！(個人的にはrbrさんが凄い好きでした) (2020年3月30日 19時) (レス) id: 8749d17fa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歳 | 作成日時：2019年9月30日 0時
