ぼく１９歳、妹１３歳 ページ13
大学の合格が決まってしばらく経ち、時間もできた。
すっかり家事も板について、パートから社員として勤務することになり忙しくなった母親の代わりに家事をすることも珍しくなくなっていた。
Aは、中学生になっていた。
「(今日は寒いし、鍋やな。おでんか普通の鍋かー‥‥)」
締め食べたいし鍋にしよ。と冷蔵庫の食材をがさごそと漁っていると、バタン！と玄関の扉が開く音。なんやなんやと台所から出ると、仏頂面のAがリビングへと入ってくる。
「A？」
「‥‥」
俯いて、なにかに耐え忍ぶような表情。
なにかあったな、というのは一目瞭然だったので、内心で苦笑してよしよしと頭を撫でてやる。
「どうしたん？」
「‥‥部活、で」
言葉尻が震えている。
「私が、ミスしたから、負けたって、」
そこから咳が切れたように、Aは俺に飛びつくと胸に顔をうずめてうわぁあんと泣き出す。
「A‥‥」
部活でのミスに対して、酷く言われたようだった。顔をうずめたまま泣きじゃくるAの後頭部を優しく撫でて、ぎゅーっと抱き寄せる。
「よしよし。Aは頑張ってるの、兄ちゃん知ってんで」
「ひどいよっ‥‥おにいちゃ、おにいちゃ、う」
Aが泣いているのに、泣いて縋れるのは俺だけなんだと奥底で喜ぶ俺はおかしいのだ。
「うん。酷いなぁ、でも大丈夫やで。お兄ちゃんがおる」
そうだ。全部捨ててしまえばいい。
俺がいる、傍にいるから全部捨ててしまって。
そうすれば俺は、
「ひ、どいって、おもうけ、ど‥‥みす、したのわたし、だから、んん、わたしが、もっと、ちゃんと‥‥う、あ」
「！」
”もっと自分がちゃんとしていれば良かったから、ひどいことを言ってきた友達は酷いけど、責めきれない。”
「‥‥」
ああまた、こすいこと考えてたなあ、俺。
「ん！きっと仲直りできる。大丈夫や、な？」
体を離し、袖口で涙を拭おうとするAの手を止めて、タオルで拭いてやる。ひっくとしゃっくりしていたが、涙は止まったようだった。
「ほら、可愛い顔が台無しや。今日は鍋やで。好きやろ？」
「ん‥‥」
「顔洗っといで」
洗面所へ消えていくAの背中を見送って、聞こえないように深くため息をつく。
「いつまで経っても成長せんなぁ‥‥」
このままでいいだなんて、都合のいいことだ。
このままじゃ駄目なことくらい、自分がよくわかっているくせに。
俺は２０歳、名前は１４歳になろうとしていた。
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千歳(プロフ) - 櫻さん» ひえーありがとうございます！嬉しいお言葉頂戴してしまい恐縮です‥‥この２人にとっては、どんな結末になっても幸せになれないな、と思い詳しく書けなかった次第です。私のさじ加減で決めつけてしまう気がして‥‥。ありがとうございました！ (2019年9月29日 18時) (
レス) id: 3a13f3dc2e (このIDを非表示/違反報告)
千歳(プロフ) - きのこ(em推し)さん» ああああ楽しんでいただけたのならよかったです‥‥！ほのぼの(？)書く事が多くてこういう系統はあまり書かなかったので‥‥！崇めないでください‥‥！でもありがとうございます‥‥！ (2019年9月29日 18時) (レス) id: 3a13f3dc2e (このIDを非表示/違反報告)
櫻(プロフ) - 心臓がっ！心臓が痛い！！とても素敵なお話に出会えてもう言葉にできません。二人がどうなったのか読者に考えてもらえる構成が素晴らしいと思いました。 (2019年9月29日 14時) (レス) id: 9db9e664f9 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(em推し) - あぁぁっぁぁっぁあ尊いぃぃぃぃぃぃぃtn氏カッコ良過ぎるよぉぉぉ神作者様の千歳様を崇めさせてください。 (2019年9月28日 18時) (レス) id: 4906f728aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歳 | 作成日時：2019年9月28日 4時
