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「……久しぶりだな」
Aは、漆黒に満ちた人気のない空き地で、幽鬼のように佇む男に声を掛ける。十人ほど、どこかに身を隠しているのが気配で分かったが、迷わず足を進め、男と相対する。きろりと、虚ろな瞳がAを見た。その眼が宿す深い闇に、肌が泡立つ。最後に会ったときはーー彼女がまだ生きていた頃は、こんな姿ではなかった。誰にでも好かれるような好青年だったはずだ。
「来たか、A」
放たれた低く、昏い声音。地獄の底から舞い戻ったような、悪意を身に纏う男を無言で睨み付ける。無意識に、鞘を握る左手に力が入った。
「
「当然だ、お前は俺の女を殺した。あれから何年か経ったが、あの夜を一度たりとて忘れたことはない」
「そうだな、事故とはいえ私が彼女を殺したのは事実だ。今更言い訳なんてしねぇよ」
左の親指で鯉口を切る。カチッと、小さく金属が擦れ合ったような音がした。
「は？事故？もとはお前のせいだろうが！お前が余計なことをしなければ、今頃はお菊と幸せに暮らしていたはずだ！」
「他人から奪った金を使ってか！そんなことをしてお菊が幸せになれると、本気で思ってるのかッ！」
「ああそうだ、所詮この世は金なんだよ！金がなきゃ食べるものも、着るものも何もねぇ！幕臣が無駄遣いする金を、俺が代わりに使ってやろうと思ったんだ」
むしろ、感謝して欲しいね。
全く自分の正義を疑っていない男は、にいっと口の端を吊り上げた。死人のような瞳に、不釣り合いな笑顔。悪を全身で背追った沙々木は、腰の刀の鯉口を切り、一気に引き抜いた。傍らに、用済みとなった鞘を捨てる。それを、Aは警戒の眼差しで沙々木の一挙一動を追いながら、静かに抜刀した。
「津々楽A、お前は今夜ここで殺す。そのために、血反吐を吐いて、戦力を確保したんだ。菊に死んで詫びろ」
息を潜めていた十の気配が大きく動いた。この場にいる自分以外の人間全てから放たれる、全身を射抜くような殺気。生命の危機を感じて、身体の全ての感覚が研ぎ澄まされていくように感じた。命と命の殴り合い。その極限まで高められた生と死の乱舞は、時として、自分の実力以上の力を引き出すものである。
「謝罪するのはオマエの方だ。その狂った正義感、私が叩き直してやる」
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☆辻村春樹☆(プロフ) - ハルさん» 初めまして！コメントありがとうございました。沖田姉弟の場面もこだわって書いている部分が多いので好きになって頂けて嬉しいです。総悟は出番少なかったので徐々に増やしていけたらいいなと思ってます！これからもよろしくお願いします。 (2022年1月6日 23時) (
レス) @page35 id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 初めまして。沖田が姉上とデェトと言うところが可愛すぎます……。あと文章がめちゃくちゃ好きです。とても引き込まれます。ミツバの印象のシーンなんてもう感動いたしました！これからも応援しています！ (2022年1月6日 22時) (レス) @page14 id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - いくまさん» わ、嬉しい！ありがとうございます！！需要ないよな、と落ち込んでましたが、おかげでこれからも書き続けられます、更新頑張ります！！（嬉し泣きしそうです…） (2021年12月13日 18時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 新作ドタイプです…陰ながら全力で応援させて頂きますね、、！更新頑張って下さい！ (2021年12月13日 17時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆辻村春樹☆ | 作成日時：2021年12月12日 20時
