食べ過ぎにご注意を/zm ページ6
貴「……うっ。」
お腹の中はもうなにも入らないくらいパンパンになっていて、口から食べたものが出てきそうだった。
あれだけ賑わっていた居酒屋はもう人の出入りはなくなって、私とゾムの二人だけとなってしまった。一緒に来ていたトントン、大先生は限界になったのと、ブロマガを書いていないということで、家に帰ってしまった。
「苦しそうやなぁ。」
うめき声を上げる私をじっと見て、ゾムは楽しそうに笑いながら目を細めた。
そう、今私を苦しめているのは、この男。
貴「…………誰のせいだと！」
思っているのか、そう言おうとしたが、目の前にゾムはおつまみを出した。
これ以上入らないが、おつまみならばいいかとひとつ溜め息をこぼして手を伸ばす。
いつの間にかテーブルに運ばれてきた日本酒でごくり、と喉を潤した。
「……俺も飲も。」
私の一連の動作をしっかりと見届けてから、ゾムも日本酒を口元に運ぶ。
コポコポと日本酒を次ぐ音だけが耳に届く。店の人は奥に入って店を閉める準備でもしているのだろう。
普通、苦しいなら帰ればいいと思うのだろうか。実際大先生とトントンはそうしたのだし、それは当たり前のことなのだろう。
いや、あの二人は気をきかせてくれたのかもしれない。
私はゾムのことが好きなのだが、一向にそれは伝わらないままだ。過大評価するわけではないが、アプローチはそうとうしているはずだ。
はぁー、と深い溜め息をつき、酒を口に含む。
「なんで溜め息つくんや。」
貴「だって……全然振り向いてくれないんだもん。」
考えることを止めた頭は時に口を軽くしてしまうらしい。私は自分の発したことばに後悔した。ゾムの顔を覗き込む。
「……俺、苦しんででも食べようとしてくれるAの顔が一番好きやわ。」
貴「……え。」
酔っていた頭は完全にさめた。いまだニヤリと笑っているゾムを思わず凝視する。
それはどういう意味だろうか。
なんと捉えたらいいのだろうか。
彼の言い回しはとても分かりづらくて、一生懸命頭を働かせる。
「……ま、当分はこのままやけどな。」
小声だったゾム言葉は私には届かず、頭を抱えていた私はゾムの笑顔には気づくことができなかった。
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作者名：大佐 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年2月5日 15時
