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子供/grpn ページ22

男にはその言葉の意味が理解出来なかった。頭脳明晰と言われた彼が。総統と恐れられ尊敬され、疎まれる存在だった彼が。誰かにきかれることなど無かったのだ。

自分が命令するだけで、国が1つ滅び、気にくわないと思っただけで、人一人地獄に落とす。
己の言葉が絶対であるがゆえに。

「……それがわからないのなら、私は貴方の望み通りにはならないわ。」

困惑する彼には酷く冷淡な言葉なのだろう。とはいえ、この答えを彼女は知っている訳ではなかった。寧ろ、これは彼女が一番知りたかったことなのだろう。


「……すまない。」


それは何に対しての謝罪か。考え抜いた末に出したものは謝罪だけであった。
重々しい雰囲気のまま、彼は部屋を出ていった。

「……もう、終わりにしましょう。」



最悪の朝だ。昨日はAの言葉が重くのしかかって、寝つけずにいた。漸く寝ることができたかと思えば、彼女を手離してしまうという夢を見た。なんて、縁起の悪い。

「グルさんグルさん!!大変や!Aが!」

突然部屋の扉を慌ただしく開け放ったトントン。彼の言葉に背筋が凍った。いつの間にか彼女の部屋に向かって走り出していた。

「あ!待ってやグルさん!Aは……。」


扉の前にたった。何も贈り物を持たずに訪れるのは初めてではないだろうか。一体彼女に何があったのか。部屋に入ればわかるだろうと、心拍数がはやい心臓に落ち着け、と念じつつドアノブを回した。

「…………は。」

口から溢れた言葉は、何を表すか。男は時が止まったのかと錯覚した。呼吸の仕方も一瞬忘れるほど、頭が真っ白になったのだ。

彼の目に映ったものは黒いドレスを着た女に死体だった。女は首を吊って命を絶っていた。

「何故だ……。」

それは疑問。すべてに対する、疑問。
男は怒りに震えた。自分の所有物が勝手に命を絶ったこと。その理由を知らないこと。気づくことができなかったこと。

そして。

「ただ、気に入っていただけだと思っていた。…なのに何故、こんなに胸が苦しくなる……?」

余裕のない表情で男は目を閉じた彼女を抱き締めた。
もう彼が、その答えに辿り着く手段ははない。
頬を伝ったそれに、彼は気づかない。


「……グルさん。それは多分。」

今まで知ることがなかった、愛というもの。

「ほんまにアンタ子供やな……。」

蔑みでもなく、同情でもないそんな顔で1人彼は薄ら笑いを浮かべた。

これからもずっと/tntn→←子供/grpn



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作者名:大佐 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年2月5日 15時

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