呼ばれた気がした/zm ページ14
窓がないこの部屋は、昼か夜かなんて判断することもできない。一国の姫として生まれ育った私に自由などない。
私はお父様の決めた道を歩いて、壁にぶつからず、つまらない人生を送る人形にしか過ぎない。
私のいるこの部屋は地上から離れた高い場所にあることは知っていた。前に一度だけ食事を持ってきてくれるメイドの横を駆け抜けて部屋の外を見たから。
お城の階段をひたすら下り続け、地面に足をつけると目の前には広大な世界が広がっていた。
私の目に映ったのはそれだけではなかった。
「ん？誰や？」
私と同じくらいの歳に見える男性がいた。私の身に付けている装飾品やドレスと違って随分とみすぼらしい服だった。けれど、私はそんな服を着た彼に羨ましいと思ってしまった。
一目見ただけで不思議とわかってしまったのだ。彼は自由に生きているのだと。
私の直感はそう言っていた。
貴「あ、あの貴方は誰ですか？」
「急な質問やな……ええけど。……俺はゾムや。」
貴「ゾム……さん。」
ゆっくりと噛み砕くように、彼の名前を脳に刻み込む。素敵な響き。イントネーションの違う喋り方ではあるもののどこか安心できるような声。
私は一目惚れをしたのだと思う。
「お前は？」
私の名前を教えようとしたとき、怒りと焦りが混ざったような声が聞こえた。
見つかってしまった。すがるようにゾムさんの方を見て頬に口づける。
耳元で助けてと囁いた後は私は両方の腕を拘束された。
「見つけましたぞ！姫様！」
「さぁ大人しくして下さい！」
真に受けないでね、という意味を込めて私はゾムさんにぎこちない笑みを浮かべた。
その時に見た彼は驚いたように見えた。
少しでも私を覚えていて欲しいという自己満足。助けにくるはずもないのに。貴方が私の王子様だったら、なんて考えてしまう。自分勝手な私をどうか許して。
思い出す度に涙は溢れ落ちる。貴方に会いたい。ろくな会話もできていない。声なんて届かない、それでも。
貴「……たす、けて。」
掠れた声で貴方を呼ぶの。
____。
一瞬で扉も壁も壊れた。煙の中から人影がみえた。それは段々近づいて、形となる。
貴「な、んで……？」
震える声で問えば。
「呼ばれた気がしてん、お前に。」
なんて言って手を伸ばして、笑っている。
ボヤける視界の中必死に手を伸ばして言った
貴「助けてゾムっ。」
当たり前やろって抱き締めてくれた。
貴方が好きです。王子様。
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作者名：大佐 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年2月5日 15時
