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第五十九話 零side ページ16

「……星…」



着いた先は展望台。

僕が昔、あいつらと共に毎年一回来ていた場所だ。

酒やらつまみやらを持ってここに集まって、星を見ながら飲み食いしていた。



『なぁゼロ、毎年ここに集まるのってどうだ?』


『はぁ? わざわざ?』


『お、それいいんじゃん! 景光にさんせーい』


『もっと別んとこでいいだろ』


『いいじゃねーか、ここで。ま、俺はお前たちと酒呑めるならどこでもいいけどよ』


『…じゃあ、ヒロの望み通りで』


『やりぃ!』



でも、僕らの職業上、互いにいつ死ぬかわからなかったから毎年集まれるか不安も少しあった。

そして、そんな不安は当たり

また一人、また一人といなくなって

僕一人になった。



「綺麗…」



手すりを力いっぱい掴み、空から目を逸らせないでいるAを見やる。

こうして

こうしてまた、僕の大切な人とここに来て

星を見ることが夢だった。

もう、僕も29になって

恋人にも縁が無く、諦めていた僕の小さな夢が

今日、叶った。



「A」


「なあに?」



気が抜けているのか、いつもの口調とは違い

可愛らしい印象の口調でAは返事を返した。



「…Aが好きです。僕と付き合ってください」



今どき中学生でもしないような告白を29のおっさんが頭を下げて告白する。

Aとまた会えて、完全に二人きりになれた試しがなく言えなかった。

別れの時、僕の告白は届いていたのかわからないし

あやふやな感じで、僕の彼女と紹介してしまったから

今度こそ、もう一度。

愛している人へ

想いを伝えよう。



「ーー…」



返事がない。

何も喋らないAに不安になり、僕は顔を上げる。

すると、Aの瞳からは涙が零れていた。



「あ…こ、れは…っごめん、ごめんっ…嬉しく、て」



Aは両手で涙を拭い、僕の目を真っ直ぐ見た。



「…っはい。よろしくお願いしますっ…」



また、Aの瞳から涙がポロポロと溢れた。



「っA」



Aの腕を引っ張り、抱きしめる。



「愛してる」



そう言って、Aにキスをした。

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yu-kun(プロフ) - まだ見ていただいてる方へ。アカウント変えて続き書いてます。よろしくればプロフからどうぞ。 (2023年4月5日 4時) (レス) id: 7bcd0f2da7 (このIDを非表示/違反報告)
美月 - 「続き」じゃなくて「終わり」になってるから続くのか心配です....見たいです。作成さんも都合があると思うのでそこは首を長くして待っておきます!更新をが楽しみです (2022年6月24日 11時) (レス) @page46 id: c0ec2f5f77 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - 続きがとても気になります!更新楽しみに待ってます! (2021年5月2日 18時) (レス) id: c50ca7ded5 (このIDを非表示/違反報告)
よる - 感情がリアルで凄くドキドキします!続き楽しみです! (2020年6月17日 9時) (レス) id: 68950930bb (このIDを非表示/違反報告)
名無し - わー!続きが気になります!更新楽しみにしてます(^^) (2020年3月18日 5時) (レス) id: 1e13ba2df3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:yu-kun | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/yyyh/  
作成日時:2019年10月6日 16時

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