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「別れてないし。Aは俺のもんだから」
気付いたら、物陰から飛び出して、Aを抱き寄せていた。告白してきたヤツはちょっと拍子抜けた顔して、は? って呟いた。
「お前ら、じゃあまだ」
「付き合ってるから。悪いけど、手、引いて」
「……悪い」
それだけ言い残して去っていったやつの背中を見つめる。腹立たしい、と呟いた俺の制服を、Aがつんつん、と引っ張った。
「貴大、帰っててよかったのに」
「……」
何も言わず、俺はAを抱きしめた。強く強く。俺より勉強が大事、っていう現実を改めて突きつけられた悔しさだと思う。
「くるしい、」
ちょっとうめき声をあげた彼女を無視して、唇に噛み付く。
「……んっ、!」
ねっとりと舌を絡ませながら、シャツのボタンを一つずつ外す。
「たかひろ! ……ここ、学校!」
「誰も来ないって、」
どうせここは体育倉庫の裏だ。そう思いながら、今度は顕になった首筋にかぶりついて、ちょっと濃いめの印をつけて。
鎖骨に舌を這わせ、スカートに手を滑り込ませれば、くぐもった喘ぎの声が鼓膜を揺らす。視線だけ上にやれば、Aは両手で口を抑えて、涙目で耐えていた。
「そんなん、そそるだけだし」
顔を真っ赤にして腰が砕けそうになってる彼女に、俺の存在をアピールしたくて。勉強より俺を見て欲しいって思うようになって……やりたい放題した。
倉庫の裏、っていう背徳感が劣情を煽った。
事後、Aは泣きながら俺のことを睨んでいて――しまった、ってそう思ったけど、多分もう遅かった。
「たかひろの、ばか、こんなたかひろ、きらい」
「……ごめん、」
「しらない」
泣きながら、Aは駆けていった。追いかけなきゃ、と思うのに、身がすくんで動けなくて。だいたい何で一発やったあとそんなに動けるんだよ、なんて混乱する心の中で悪態をつきながら、その場に立ち尽くした。
後悔って、いつだって先にはやってこない。
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作者名:ひな | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd
作成日時:2017年3月14日 23時