七十壱.またねと言って編 ページ6
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「A!!今度の休み、旅行行こう!リベンジ!」
千影はガッツポーズを決めながら、意気揚々と言う。
目をきらきらとさせる彼女に申し訳ない気持ちになりながら、
「ごめん…私無理なんだあ。久しぶりに実家に帰ろうと思って」
と返した。
断りたくはなかったが、用事が用事だ。
まるで犬のしっぽのように、彼女は悲しそうに眉が下がる。
「そっか…それは仕方ないよね」
「ごめん…また行こう」
「うん。じゃあ、お土産買ってくるから、待っててよ」
何にしようかな、なんて千影は鼻歌を歌う。
明日はまた仕事だ。
取り残した調書に手をつけながら、彼女の楽しそうな声を聞く。
そんな時、
「A、千影、入るぞ」
ノックがして、間髪入れずに沖田は入ってくる。
当たり前のように空いたAのベッドに腰を下ろし、鋭い目でこちらを見る。
「悪りぃが、旅行は延期だな」
「また嫌がらせですか」
千影は眉間に皺を寄せる。
相変わらずこの二人の仲は悪い。
「いや。そんなことより死活問題だぜ」
沖田は深刻な顔をして二人を見た。
つい先程、屯所宛に送られてきた郵送物の中に物騒なものがあったという。
『幕府の犬どもへ告ぐ。近日、お前らの仲間に天誅を下す』
「いわゆる、予告状って奴ですかいねぇ」
「送り主は」
「さあ?今、ザキ達に調べさせているが指紋らしきもんは見つかってないらしいしな」
ふう、と息を吐いて沖田は口を歪めた。
要するに限界体制にあるから動くな、ということである。
(久々にお母さん達に会えると思ったのにな)
がっくりと肩を落とした時、
「A!千影!!って総悟もいたのか」
近藤は血相を変えて部屋に入ってきた。
彼の慌てぶりに三人揃って立ち上がる。
千影はハンガーのジャケットに手をかけた。
「例の予告だが」
「何か動きが」
そう尋ねていると、廊下がばたばたと騒がしくなる。
警備服だとか何とか。
その声に、皆の緊張感が高まる。
近藤の返事を待ちながら、支度する準備に取り掛かり、
「仲間が一人やられた。巡回中に首をばっさりとな」
近藤の後に続いた。
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年5月10日 23時