検索窓
今日:4 hit、昨日:22 hit、合計:16,347 hit

七十九 ページ14

.



Aは立ち上がり、松平に食ってかかった。





「貴方は千影の何を知ってるんですか!!!





彼女なりに努力してたことも、悩んでいたことも、





何も……何も、知らない癖に!!!」




「A!落ち着け!!」




慌てて三人でAを床に押さえつける。
わざと煽るような発言をした松平は踏ん反り返り、旨そうに煙草の煙を吐いている。

覆い被さる男達の下で、女はまた襲い掛かろうと言わんばかりに松平を睨んでいる。




「総悟」




その一声に、沖田はAをひょいと抱え上げる。
案の定彼女は暴れるも、彼はどこ吹く風だ。
そのまま扉を閉め、彼女を自室へと連れて行く。



「沖田さん!離して下さい!私は、まだ話が」




「へぇへぇ。俺が聞いてやっから」




騒ぐ声は次第に小さくなる。
土方はほっとしたように溜息を一つ溢した。




「今からだぞ。大変なのは」




松平はまた煙草に火をつける。
そして溜息と一緒に煙を吐く。



「とっつぁん。Aであんなこと言わなくても」




「本当のことを言って何が悪いんだあ」




真選組に入隊希望を出してきた女達は数知れない。
腕の立つ者、頭脳明晰な者、秀でた才能を持つ者は多くいた。
その中で選ばれたのが、Aと千影。

彼女達は特別剣術に優れている訳でもなく、頭が良い訳ではない。
真選組という組織に入れるにあたり、真選組の礼儀や規律を染み付かせるには、発展途上なくらいがちょうどよかった。




「家柄ってのは意外と大事なもんだな」




そこで試験的に導入されたのが、家庭環境である。



「とっつぁん…お言葉ですが、家柄はあまり関係ないかと」




「まあ、いい検討材料にはなったが」




「千影は残念だったが…





彼女は良い人材だった。辞めるには惜しかったな」




土方はそうぽつりと呟いた。

Aに比べ考えは幼く、少々生意気と言っても過言ではない小娘だった。
しかし、Aと切磋琢磨し、彼女はみるみる才覚を見せていた。
間違いなく、Aと共に今の真選組に必要な存在になっていた。

そして、Aにとって、ここにいる誰よりも大切な存在だったのだ。




「トシ。Aの所に行ってやれ」




俯く男に命令を下す。
彼は珍しく素直に応じ、部屋を出ていく。




「…なるほど。俺が暫く来ないうちに、そういう進展もあっているなんてな」




「とっつぁん。





千影やAが変化するように、俺達にも多少の変化があるんだよ」



.

八十→←七十八



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (41 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
113人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 真選組 , 土方十四郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Nattu | 作成日時:2022年5月10日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。