松野家六つ子…本日＿【人外松】 (ページ5)

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間ページ5

それは化け物の口から発せられていた。

そして、口の中に何かが見える。
あれは、舌？その先にある鋭い牙を目にした瞬間、俺は悟った。
こいつは、俺を食い殺すつもりだ。逃げようと必死に藻掻く。しかしやはり体は動かない。

目の前まで迫った大きな口に恐怖し、俺は目を瞑った。
その時。
___りん。
先程と同じ、澄み切った綺麗な音が響いた。

そこで気が付いた。この鈴の音は竜の口から発せられている物だという事を。

［＿＿ん］

鈴の音はいつの間にか俺の頭の中で言葉(・・)に換算されていた。
……この声、何処かで。

［____］
また聞こえる。
今度はさっきよりもはっきりと。

［＿＿さん!一松兄さん!!］

やっと音が何を言っているのか分かった。
俺の名前を、この化け物は呼んだ。いや待てよ、そもそも何で俺の名前を知っているんだ。
俺はこいつを知らないのに。
というか、こいつは今喋った。

という事は意志が通用するのでは?
そう思い、震える喉を抑えながら声を出す。
「…あの、あなたは…何で、俺の名前」

そう言うと、化け物は何も言わなくなった。あれ、もしかして通用していない?
間違った選択をしてしまったのか?
化け物がまた鈴の音を出す。

［兄さん!！僕だよ!！］

今度はそう聞こえた。この化け物は何か勘違いしてないか?俺は目の前の恐怖の対象の兄になった覚えはない。
そもそも種族(?)が違うだろ。流石にゴミクズな俺でも自分が人間であるって事は分かってる。

…化け物が放った次の言葉で、俺は信じざるを得なくなった。

［僕だよ!十四松!!］
「…………は？」

今、十四松と言ったか。
やっぱり夢なんだろ、コレ。
混乱する俺に畳みかけるように化け物が続ける。

［ごめんね兄さん！雷に打たれそうだったから助けたの!！］
「…は？は、はぁ?どういう事…な、十四松なの、お前⁉」

うん、とでも言うように十四松(?)が頭を大きく縦に振った。…つまり。
俺は化け物の瞳を見つめ返した。

これは夢ではなく現実で、目の前のコイツが弟で、俺は雷に打たれそうだった所を化け物になったこの弟に救われたという事なのか？理解が追いつかない。
だってこんなの有り得ない。非現実的過ぎる。

でも、これが夢じゃないのなら…目の前のこいつが本当に十四松だというのならば。

___信じたいと思った。

＿＿
カオスww