松野家六つ子…本日＿【人外松】 (ページ4)

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家族に最後の挨拶すらできないのか…。
なんて思いながらゆっくり目を瞑る。どうせなら痛みの感じない方法でこの世を去りたかった。相変わらずクズ思考で、危機的状況だというのに笑えてくる。
そしてついに、分厚い雲に到達した。

今までに聞いたことのないような爆音が響く。
数え切れないほどの大音量が鼓膜を刺激する。
耳が、痛い。

暫く、その状態が続いた。

本当に鼓膜が破れるんじゃないかと思った瞬間、不意に音が消えた。
同時に瞼を閉じていても分かるくらい明るい光が顔に当たるのを感じ、俺は雷雲から出たのだと理解した。瞼の裏を流れる血液の所為で内側が赤く見える。

背中辺りの違和感が無くなった。
しかし今度は腰辺りに何かが巻き付く感触がして、驚いて反射的に目を開く。

顔に当たっていた光は、太陽からのものだった。
一瞬その光の所為で周りが青白く映り混乱するが、それ以前に堂々と俺の視界に映るそれが気になった。

蛇のような細長い胴体。それに並べられるように生えた苅安色の鱗。
背中には黄金のふさふさした鬣のようなもの。瞳は黄色く輝き俺の事を真っ直ぐ射抜く。
…嘘だ。俺は多分、悪夢を見てるんだ。実際目の前のこいつに翼は無いのだから。
本やネットでその存在が語られているだけの架空の動物だと、そう思っていたのに。

…その姿は、正しく空想上の動物、竜だった。
慣れてくるとそれがはっきり見え、俺は思わず叫んだ…筈だった。

「(＿＿＿化け物!!)」

声が出ない。
ヒュー、と息が漏れ出る小さな音しか聞こえなかった。
足を動かして藻掻くが、びくともしない。

放心状態の俺に、そいつは顔を近づけてきた。
あ、喰われる。

そう思いまた目を瞑ろうとするが、何故かその瞳から目が離せなかった。
何処か既視感のあるくりくりとした瞳。そこに顔を真っ青にした俺が映っていた。

早く、覚めてくれ。夢ってのは死ぬ前ぎりぎりで覚めるはずだろ普通。憶測でしかないけど。
もしこれが夢で、目を覚ましたら兄弟の誰でもいい。(できればクソ松以外)
誰かがおはようって言ってくれれば、それでいいのに。
でも標高の高い所特有の肌寒さも、下で微かになる雷の音も、凄くリアルで、夢とは到底思えなかった。

焦る俺を見て何を思ったか、化け物は口を開けた。
不味い不味い不味い、どうすれば!!

＿＿りん。
何処かで、鈴のような、風鈴のような音が鳴った。

＿＿
のべりすとを使っていると表現能力の乏しさが分かっていつも落胆してますww