別れたので、新しい恋を探します【MASHLE】

ep.01 ページ1

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―――― 春はもうすぐだった。







まだ寒さが色濃く残る、3月。


出会いへの期待と、別れへの寂しさで一喜一憂する人が多いこの時期。
いわば卒業シーズン。



世の中には、2種類の人間がいる。






1つ目は、出会いへの期待に胸を膨らませ、別れへの寂しさは塵ほどにしか感じない人間


2つ目は、別れへの寂しさが大きすぎて、出会いへの期待などには到底頭が回らない人間






前者であれば、どれだけこの卒業式を笑顔で終わらせることができたか。
だが、どうやら私は、その二択の後者だったらしい。











「…別れよ」









目の前にいる男は、私にそう告げる。

バクバクと心臓が嫌な音を立て、なにか変な汗が流れる。


なるほど、やっぱりそう来るか。

「この後話がある」と卒業式直前に言われた時にはもう、うすうす勘づいていた。
卒業式、話、カップル、この三つの要素が交われば、導き出される答えは一つ。別れ話だ。

分かってはいた。
分かってはいたけれど、いざ本当に別れ話をされると、ここまで人間は苦しくなるものなのか












「…そうだね、いいよ」










もう搾りに搾った搾りカスのような声で呟くと、目の前のたった今まで彼氏だった、
…もとい、元彼は、「ん、」とだけ返して踵を返し、みんなの元へ行ってしまった。

交際関係って、あっけなく終わってしまうものなんだな


勘弁してくれよ、卒業式のこの日に泣きたくない。
…いや、卒業式だからこそ、泣いても誤魔化しが効くのか。よし、いっぱい泣いてやる。



どうせ泣きたくない〜〜〜って思っている間も涙は流れるんだ。
だったら最初っから潔く泣いてた方が、かっこよくない？

とか考えてるこの間も、私の目からは涙がこぼれ落ちているんだけど。












「……あれ、Aちゃん？何してるの？こんなところで…」

「…フィンくん、」










この体育館裏なんて場所にしゃがんで、
うわんうわんと泣いている惨め極まりない私に声をかけてくれたこの子は、フィンくん。
本名を、フィン・エイムズくん。


2本線お兄さんがいるらしく、「レイン先輩の弟」という肩書が強すぎる。

この子自身はとてもいい子だし、なぜみんなこの子のことを見てあげないのだろう…
という謎の母性が芽生えるほどには、仲がいい子だ。











「どこにもいなかったから心配して…って、泣いてる？！」










…どうやら心配をかけてしまったらしい。








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