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以前から使っていた、ボカロP“わたげ”とは別のTwitterアカウントにログインする。
私が初めてTwitterを使ったときに作った、私以外誰も知らない推し垢だ。もちろんフォロワーはゼロ。
そこから、もう既に使わなくなったわたげのアカウントに移動すると、たくさんのリプが。応援してくれた人、こんなにたくさんいたんだな。
申し訳ないとは思いつつも、もう絶対にボカロPとして活動することはないだろう。
最後に、別れを告げるために作った曲が、この曲なのだから。
さよならユーフォリア。
初めて、自らの肉声で歌った曲。
私がボカロPとして活動を始めたのには、二つの訳がある。
一つ目は、憧れである真冬さん……いや、まふまふさんと同じ舞台に立ちたかったから。
夢であるとは思っていたけれど、夢を見ることができるのなら、と始めた活動だ。
けれど、それならば歌い手で良かったのではないか、そう思う人はいるはずだ。私は決して歌が下手なわけではない。それは自覚していた。
なら、なぜ歌い手ではなくボカロPとして活動しているのか。
答えは単純。“自らの肉声で歌を歌いたくなかった”からだ。
曲を作るのはもちろん、歌うのも好きだ。特に、感情をのせて歌うことが。
だからこそ、自分の肉声で歌を歌いたくなかった。
「わがまま、だよな」
感情をのせて歌を歌ってしまえば、それは自分の叫びになる。
心の奥底に封じ込めようとしていた思いさえも押し出してしまう。
「……ごめんなさい、真冬さん」
決して自分の思いに気づかれないように。
決して重荷になってしまわないように。
―――私は、まふまふさんのリアコだった。
まだボカロPとして活動するなんて考えてもいなかったころ。
まふまふさんの声に惹かれて、そして調べていくうちに人柄にも惹かれて。
同じような思いをしている人は何人もいるのだろう。
だから、ボカロPとして真冬さんの傍に居られることが幸せで、同時に背徳感も覚えていた。
だから、自分の肉声ではなく、ボーカロイドに私の歌を歌わせていた。
私の作った恋歌を自分で歌うことで、思いが溢れてしまわないように。思いに気づかれてしまわないように。
だから、最後に歌ったあの曲は、別れを告げるための曲。
初めて“誰かに伝えたい”そう思って書いた曲なのだ。
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千々(プロフ) - そらねこさん» お話の波乱万丈さをあまりかけなくて、心情描写に気を使ったのでそう言っていただけてとても嬉しいです! ありがとうございます! (2020年7月15日 19時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
そらねこ(プロフ) - ああ……好きです……心情描写が細やかで綺麗で切なくて、読み終わった時なんか胸がふわっとしました……語彙力がなくてもどかしい!ありがとうございました! (2020年7月14日 18時) (レス) id: d3d4d4d9f7 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - しぇるふぃあ。((芦原晴))さん» ですよねですよね! 個人的にその台詞すごく気に入っていて! そう言っていただいて嬉しいです! 両片想いからの両想いっていいですよねぇ……このお話それを書きたくて書いたんですもん←← (2020年7月14日 17時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - 個人的に両片想い→両想いが大好きなのでドストライクでした。良い作品を読ませていただいてありがとうございました!! (2020年7月14日 12時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。((芦原晴))(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。有名人ならではの恋のし辛さやSNSでのトラブルの展開がいいスパイスになって、全体的にしっとりとした雰囲気の漂う作品でした。mfさんの「ユーフォリアなんて言わせない」がとてもよくて涙腺が……! (2020年7月14日 12時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年6月7日 15時