二人の“キズナ”【吉良ヒロト】 (ページ46)

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エピローグ3 ページ46

１ヶ月後。

月日が経つのは案外早いものだ。あの雪が降っていた春とは違い、今は暖かく、過ごしやすい春となっていた。

大学生活の2年目がもう目の前な時、試験の結果通知が送られてきた。

『緊張する…』

「Aなら受かる」

郵便受けに入っていた封筒は、少し分厚い。

封筒を慎重に破り、紙をゆっくり引き上げる。

文章を必死に目で追う。

『…合格いたしました』

『受かった！合格したよヒロト！』

「頑張ったな」

喜びと安心から目に涙を浮かべるAの頭を優しく叩くヒロト。

『頑張ったよ…！毎日たくさん勉強して、やりたいことも我慢して…』

「だからこそ受かったんだろ？さすがだな」

『私…中学生の時に初めて勉強したから全然分からなくて…高校だって、推薦がなかったらどこにも入れなかったし…勉強、全然分からなかった…大学も推薦だし、ついていけなかった…
けど、努力して…』

「学年最下位だったもんな、中学も高校も。それでも毎日何時間もやって。よくやった」

『私心配だったの…私はどれだけ頑張っても何もできないんじゃないかって…中学校も高校もたくさん勉強したのに最下位で…もう私にできることはないんじゃないかって…
けど、ヒロトはいつも言ってくれたよね…』

「諦めんな」

『サッカーができたんだから、勉強もできる。やろうと思えば勉強だってできるって…
私、頑張った。だから大学に入っても最下位だった私が、冬頃には上位10人くらいになれた…』

「それは努力だけじゃないと思うけどな。Aは結果が出るのが遅いだけで、今までだってずっと努力は実ってたんだよ。
普通最下位のやつが半年で10位までいくか？んなわけないだろ。努力してきたことがやっと実った、から一気に上がったんだ」

「人に必ず実らない努力はねえんだ」

『ありがとうヒロト…ヒロトが私の全部を変えたくれたよ…』

Aを優しく抱きしめるヒロト。

「今日くらい甘えろ」

その言葉は眠ってしまったAには届かなかった。