智春 ページ29
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「そういえば今日ってハロウィン、だよね」
なんとなく、そう呟くとAから「あぁ、そうだったねぇ」と軽く返事が返ってくる。
教室中が甘い匂いで充満して気持ち悪くなってチャイムが鳴りが終わった途端に鞄を引っ掴んで教室から飛び出し、Aに会うため屋上まで来た。
息を切らして屋上のドアを開けるとびっくりした表情でこちらを見て「大丈夫?」なんて笑った三十分ほど前の彼女を思い出して、少し頬が緩んだ。
「そうだ天月くん、お菓子はもうもらった?」
「うん、何個かね。『Trick or Treat』ってふざけていってみたら案外皆くれるんだね。」
「ねえ、私にも言ってよ、Trick or Treat、って。」
嬉しそうにそういう彼女のお願いを断る理由もないし、少し気になるので言ってみる。
「Trick or Treat…?」
「うんうん、ちょっと待ってね、…はいどうぞ」
そう言いながら嬉しそうに鞄からガサガサと何かを取り出して可愛らしい箱を彼女は俺に手渡した。
なんだこれ?なんて思いながら手渡された箱の中身を見ると手作りらしいケーキが入っていた。
甘い匂いがふわりと香る。Aが俺のために何かをしてくれた、その事実だけでとても嬉しくなった俺は思わずAの方を見る。
「A料理苦手じゃなかったっけ、」
「せっかくのイベントだもん、味は保証しないけど天月くんのためになにかしたいって思っちゃった。
でもこれってハロウィンっていうよりバレンタインだよね、ふふ。仮装は恥ずかしいからこれくらいしか出来ないや」
そういって微笑んだAに触れたくてそっと片手を伸ばす。
長い時間屋上にいたせいか俺の手も冷たいし、同じくらいAの頬も冷たい。
けれど触れた指先が徐々にじんわりと熱を帯びて温かくなっていく。
それと同時にAの頬もゆっくりと熱く、赤くなってゆく。
まるで魔法にかかったみたいに。
ゆっくり距離を縮めて、自然に唇を重ねていた。
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瑠璃?(プロフ) - 更新いつも楽しみにしてます。 とても素敵な作品ばかりで尊敬します……! 春音さんのお話に出てきた先輩は弟の姉さんでしょうか? 合ってたらお友達d)) ……これから更新されるお話も楽しみにしてます! (2016年10月29日 9時) (レス) id: 72272aaac8 (このIDを非表示/違反報告)
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