本当の“おうじさま” ページ22
「ねぇ、すごくキラキラだね!」
「うん!きれい!」
「えへへ、なんだかおひめさまになったきぶん!」
◇
きっとあれは、一時の憧れに過ぎなかったのだろう。ハロウィンだなんだと言って、某大型遊園施設のパレードを見ていた。もう十数年、そんな桁の話だ。
私は当時大好きだった絵本に重ねて、自分のことをお姫様だと思い込んだ。そして、隣にいた幼なじみの彼は王子様だった。幼児の遊び、所詮は飯事に過ぎないのに。それでも、仮装だなんて言って身に纏っていたコスプレのようなドレス、そして光輝く世界に私は魅せられ、そう思った。
「……おはよ」
「………おはよ」
そんな、親ぐるみで仲の良かった私達ではあったが、高校卒業間近ともなった今日(こんにち)、思春期ということもあってなのか、かなり疎遠な関係を保っている。お互いに言葉を交わそうともこの程度。私は別段気にすることもなかった。多少の寂しさはあったが、離れていったのは向こうなのだから、そっとしておくのが筋かと思ったのだ。
いつも、そうだったから。
今回も、そうだと思ってたんだ。
けれど、私達の関係は、意外にも脆かったのだ。それだけの話である。私は友達が居なくなるほど彼に依存はしていないし、彼だって社交的な性格をしているから、どうってことないだろう。
「ねぇ、あんたまだ夏代と喧嘩してるの?」
「別に喧嘩とかじゃないよ」
「うそ、あんなに仲良かったのに」
正直に吐いてみろ〜!と頬を抓られる。引っ張られた場所がひりひりして、思わずいひゃい、なんて素っ頓狂な声が漏れた。
一時、付き合ってるだなんて噂も流れていたとすら聞いている。流石にそれは不味いなって、距離を置いたことはある。けれど彼から離れていくのは初めてなのだ。
私は彼の考えている事が分からない。彼自身無意識なものなのか作為的なのかすら読めないぐらいに、蓋を開けてみれば私は彼の事を何も知らなかったんだ。
「ね、仲直りしよう?なんか心配だわ」
「何がどう心配なのよ……」
「ま、まぁともかく!セッティングは私達でするから!」
さっきから会話していた友人はそう言って、彼の親しい友人を呼びつける。こそっと耳打ちをしては、口角をあげた。恐らく賛成だったのだろう、双方ともに乗り気で話始めた。お邪魔だろうな、なんて思って私はその場を後にした。
その後を追う彼の足音には、きちんと気がついていた。
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瑠璃?(プロフ) - 更新いつも楽しみにしてます。 とても素敵な作品ばかりで尊敬します……! 春音さんのお話に出てきた先輩は弟の姉さんでしょうか? 合ってたらお友達d)) ……これから更新されるお話も楽しみにしてます! (2016年10月29日 9時) (レス) id: 72272aaac8 (このIDを非表示/違反報告)
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