アヴァンギャルドにきみとぼく。 ページ13
ぱーりーぴーぽー、ぱーりーぴーぽー。
あいつは下ネタ大好き下ネタぱーりーぴーぽー。あいつは女装大好き女装ぱーりーぴーぽー。
あなたはなにぱーりーぴーぽー?
・
都内某所、ありふれたマンションは1DK。意外といいとこ住んでるねって彼女は言った。そうでしょ?ってキメ顔で肯定して笑えば、我慢ならないといった様子で彼女はとうとう吹き出してからころ笑いはじめる。
彼女の名前はA。背が高い上に細身で、すらりとしたスレンダーな体躯にアシンメトリーのショートカットがよく似合う美男……などではなく、美男に扮する成人女性である。ちなみに夏と冬はたいてい東京ビッグサイトに出陣している。
うつむきがちに斜め下を向いたときの顔の、後方からのアングルは最高に美人。かりあげたうなじが色っぽくて艶やかで、そこから首をもたげるようにして流し目で見られたらたまったもんじゃない。いいか、あれは魔性だ。たとえ服の下にさらしを巻き付けていようと、たとえ腹筋が薄く割れていようと、吸血鬼のコスプレをしていようと、美人だ。魔性だ。美人なんだ。
……というのが、彼の言い分である。
「Aちゃーん」
「わざとらしく『ちゃん』を付けない」
「……きみ、おんなのこだよね? 俺の記憶が正しければ間違いなくおんなのこだよね?」
「少なくとも生物学においても戸籍にもそうある」
随分とのっぺりした声で「うん、そうだよね」と言った彼は言葉通りにうんうん頷いていた。でも、だって「中性的」を極めすぎててぱっと見わからないくらいなんだ。
それを横目で一瞥する彼女。
「今の流し目ほんと、さいこうでした」
「……疲れてる?」
「まあ疲れてないとは言えないけどそこまでじゃねえよ」
Aはできるだけ冗談めかして、さりげなくまわりくどく聞いたつもりだったのだが……どうにも思うようにはいかないらしい。彼はいとも簡単にそんな彼女なりの気配りまでもを見抜いてしまった。
すごいと思うのだ、心底。ここまで何かを頑張れることも、人のことをしかと見てやってその上で最善の、もしくは次善の対応を適切に返せてしまうことも。
「ありがとうな〜」とかなんとか言われて、頭をぐしゃりと掻き回される。ほっそりと固い指にどきりとさせられたの。彼はふたつ年上の、おとこのひと。
……Aは確かに、自ら好んで男の格好をするが、それは見てくれだけのこと。中身は確かにまだ大学を出て間もない、いまいちあどけなさの抜けない女であるのだ。
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瑠璃?(プロフ) - 更新いつも楽しみにしてます。 とても素敵な作品ばかりで尊敬します……! 春音さんのお話に出てきた先輩は弟の姉さんでしょうか? 合ってたらお友達d)) ……これから更新されるお話も楽しみにしてます! (2016年10月29日 9時) (レス) id: 72272aaac8 (このIDを非表示/違反報告)
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