秘密。２

３ ページ25

本当にギリギリで慌てて、
新居のマンションの部屋を飛び出した。


本当に分かってないのは、章大の方。


私がどんなに独占欲が強くて、
嫉妬深いのか。


一緒の職場で見張ってないと、
不安でたまらないから、
仕事は出来たら、続けたい。


こんな本音、打ち明けたら、
章大はどんな顔するんだろう。







なんとか始業時間に間に合って、
デスクに着いた。


「今日から入った、派遣社員の藤巻由貴さん。
みんな、よろしくね」


主任の沙織さんの声に驚いて、
顔を上げる。


ふじまきゆき、確かにそう聞こえた。


藤巻由貴。


私の幼馴染と同姓同名だ。


地元の長野で、幼稚園から短大までずっと一緒だった。


だけどそこに立ってたのは・・・


周りがざわつき始める。


「えっ、なんで？
Aちゃんにそっくり。
姉妹？従姉妹？」


嶋野課長が大きな声ではっきりと、
そう言葉にしてしまった。


「頑張りますので、
よろしくお願いします」


由貴？

由貴なの？


だけど、姿形が・・・


私の知ってる、凡庸な由貴じゃない。


そこに立っているのは、
私にそっくりな女。


「藤巻さんは、
・・・新川、じゃない、安田Aさん、
彼女について仕事教えてもらって。
Aちゃん、よろしくね」


「・・・は、い」


椅子の下で、
足元がガクガク震えてるのに気付いたのは、


隣のデスクに着いた由貴に、


「Aさん、よろしくお願いします」


そう、声をかけられた時。


「どうしたんですか？
寒いですか？」


「いいえ、あの、藤巻さんは・・・
どこの出身ですか？」


「私は長野です。
先月まで長野にいて。
大阪に出てきました」


「そうなんですか」


「Aさん、おいくつですか？
同じぐらいかなあって・・・」


「２８、です」


「やっぱり！私もです。
同い年だし、敬語なしでもいいですか？
でも、やっぱり仕事の先輩だし、
ダメですかね？」


「ううん、大丈夫だよ・・・」


冷や汗が止まらない。


どうして、ここに、由貴がいるの？


他人のふりしてるけど、
絶対に由貴本人だ。


その顔、どうしたの？

整形したんだよね？


どうして、私にそんなに似てるの？


私に復讐するために・・・


西の街まで追いかけて来たの？

４→←２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す