遠くまで、届け ページ7
彼女自身でも制御できない嫉妬が彼女の手を動かしたんだと思う。
文化祭の日に気が付いた。
石川くんに向ける視線は所謂"恋する乙女"のそれだった。
その事を知りながら、いや、もっとたくさんの目が石川くんに向いてる事を知りながら、彼のそばに居続けたのは私の弱さで、狡さで、甘えだ。
たまたまあの日、私の身体を押したのはミキさんだったけどタイミングが違えば、別の誰かだったかもしれない。
押された、と誰にも言えなかった。
落ちていく私を見るミキさんの目は悲しいくらいに怯えていたから…。
ここ数日、石川くんの様子がどこか変だ。
ぼんやりとして、よそよそしくて、並んで歩くふたりの間もいつもより離れている気がして。
嫌われた？、面倒になった？、なんて怖くて聞けなくて。
そのままふたり微妙な距離のままでいた。
だけど、バレー部のふたりの話を聞いて全て合点がいった。
違う、石川くんのせいじゃない。
怪我をする前も、した後も変わらずに好きだと言ってくれた。
それがどんなに嬉しかったか。
「このままでいい？祐希、きっとAからだんだん離れていくつもりだよ。それでいいの？」
良くないよ、嫌だよ、そう口にしてしまえば、彼への思いがどんどん溢れてきて。
「私、石川くんがいなきゃ、嫌だ…」
それは直接、祐希に言ってやって、とイケメンリベロくんから、ご丁寧に通話中になっているスマホをポンと寄越された。
耳に当てれば少しイラついたような石川くんの声が届いた。
『ね、何？もう直ぐ搭乗ゲート行かないと』
「あの、ごめん、すぐ終わります」
『え！？Aさん？』
「うん、A、です」
『ど、どうしたの？』
「あの、私、石川くんにいつも助けてもらって…嬉しくて、本当に。だから、その、石川くんがいなくなると、困り、ます」
『それって…』
石川くんの後ろで、祐希、早くしろよ、と男の人の声が聞こえて。
もう切らなきゃ、と思った私にイケメンリベロが囁いた。
魔法の言葉を授けよう、と。
本当に、魔法使いみたいに笑った彼に習って、授けられた魔法の言葉を石川くんに告げた。
「世界ユース、頑張って……祐希、くん」
『え、あ、頑張る！超頑張るから…俺、』
はーい、時間切れー、と背の高い方の彼にスマホを奪われて。
「A、顔真っ赤」
「きっと祐希も真っ赤だよ」
魔法の言葉効いてるから、きっと、なんて爽やかに彼らは笑った。
苦しいほどに熱い気持ちが身体の真ん中を駆け抜けた朝だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 267人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (
レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか？？ (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください（ ; ; ） (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか？『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいＨＰで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：RON | 作成日時：2016年7月27日 22時
