喧々囂々(けんけんごうごう) ページ26
宿舎より先に担ぎ込まれたのは銭湯で。
え、なんで、なんで、と思っている間にあっという間にすっぽんぽん。
もう大丈夫だから、と言うけど、歩きづらいタイルの床が滑るからと両脇を支えられて湯船へ。
暖かい湯に肩まで浸かって、5人ほどで俺の全身を揉む。
ありがたいけど、でも、大きな高校生が集まってもぞもぞしてるのって、ちょっと、いや、かなり異様な光景でしょ。
「…あ、ちょっと楽になってきた…かも?」
おお、良かったー、とみんなで笑って。
……あれ、なんか大事なこと…
「あれ!?Aさんは!?」
「男湯にいるわけねーじゃん」
「え?じゃ女湯に…?」
「スケベか!」
「たぶんまだ体育館から俺らの泊まってる宿に移動してる最中だよ」
さっき、宿舎の住所教えたから、とリベロが言い終わるのを待たずにざばーっと立ち上がる。
「うわ、何、急に…」
「俺、何にも言わずにAさん置いてきちゃった!早く行ってあげなきゃ」
「いや、慌てんなって。また痙攣おこしたら大変だし!」
「それに、Aは…そんなに早く来れないっしょ…」
言いづらそうに誰かが呟くけど、そんなの関係ない。
きっと、不安な思いをしている彼女に早く元気な姿を届けたくて。
「じゃ、俺もう行くから」
みんなに、ありがとう、と言って慌ただしく湯船を出て脱衣所へ。
あっ!でも!忘れてた!とまたガラリと脱衣所からの引き戸を開けて、男湯に引き返した。
「え、祐希どうした?」
「もっかい綺麗に身体洗う!」
「何それ?ヤル気満々!?」
「ちょ、変なこと言わんで!そういう訳じゃないから!汗で汚いまま会いたくないだけだから!」
さっき俺らが洗ってやったじゃん、とやーやー文句を言う奴らを尻目に備え付けのジャンプーボトルをプッシュした。
汗の引いた身体をTシャツとハーフパンツに包んで、宿舎の玄関ロビーでAさんを待つ。
ヤル気満々、なんて変なこと言われたから、妙に火照った身体を脱衣所の扇風機で乾かしてから、服を着た。
玄関ロビーは少し涼しくて、ジャージの上着を羽織った。
しばらく待つと、自動ドアの開く音がして、Aさんが現れた。
開口一番、大丈夫?と不安げに眉を寄せて。
「ん、もう平気」
「うそ、だって、石川くん、倒れたし…」
「なんか、痙攣?しただけだから…もう治ったし」
そう言って笑っても、彼女の表情は全然晴れてくれなくて。
それどころかAさんは、今にも泣きそうな顔で、ごめん、と呟いた。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか?? (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください( ; ; ) (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか?『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいHPで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RON | 作成日時:2016年7月27日 22時