第15話 ページ15
茜の言う通り
廊下の突き当たりの部屋は書類倉庫だった
入口に南京錠なんて付けちゃって
大事な物を保管するにはもってこいの装飾品だ
埃と紙の匂いが強い
A「(印鑑のありそうな場所は……)」
棚の中や引き出しを隈無く見てみるが
今一度ピンと来る物は無い──
A「……？」
ふと目に入る古い紙
丁寧な折り込みをはたきで捲ると、文の様であった
冒頭の "祝" の文字上に空白がある
掠れており、内容も途切れ途切れでしか読めない
A「(……勿体無い)」
おおよそ把握したAは気持ちを一旦飲み込んで
別の紙束に目を向けた
その中から手にした一枚を何の気も無しに
確認すると──
A「…………は」
『白夜村』
故郷の名を記す其れに目を丸くした
──────
Aは今、印鑑を探している最中のはず
きり丸を早く忍術学園へ送り届けなければ
もうじき日が暮れてしまう
屋根裏を俊敏に移動する中で、
ちょうど発見した見覚えのある小袖
諸泉「…A……A！」
不意に尊奈門の声が聴こえて
顔を上げた
A「…あ……きり丸は無事…？」
諸泉「その事で探していた。売上金は持っているか？」
A「………」
何を言ってるんや此奴は
と思ったが瞬時に理解したAは一息ついて
懐から小さな布袋を取り出した
A「…ごめんねと伝えて…あと、厠を掃除すると金運が上がるって」
諸泉「……分かった」
心中察した2人
諸泉「見つかったか？」
A「いや、まだ」
諸泉「時間が掛かりそうか」
A「うん……この部屋には無かった」
諸泉「分かった、後で合流しよう。すぐ戻る」
頷くと、尊奈門は一瞬で天井裏に姿を消した
再び静まり返った部屋の中で
書類を納めた懐に手を当てる
知らなければならない情報
知りたいと言う欲望に沿う僅かな好奇心と
心の何処かで踏み入りたくないと呟く煮え切らない気持ちと
取り残された余り物の自分
兎にも角にも早く目的を果たして
立ち去りたい一心だった
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作者名：成瀬 | 作成日時：2022年7月25日 16時
