第13話 ページ13
潜入に成功し天井裏から屋敷内を見渡していると
1人の女中に目が留まった
見覚えのある臙脂色の小袖、黄色の頭巾
近くに誰も居ない事を確認して
声を掛ける
A「茜さん!」
茜「……？」
なんと、女中の中に茜が紛れていた
茜はふと見上げる
茜「……ああ、アンタ…」
Aは小袖姿で音もなく着地した
A「茜さんに折り入って頼みが……って、
何だか元気無いですね…？」
茜「さすがは忍…そんな事まで分かっちゃうのね」
A「どうされました？」
茜「お気に入りの簪を失くしちゃってさ…
ここへ来る前迄は確かに身に着けていたんだけど
はぁ……持って来るんじゃなかった」
A「それは……お気の毒ですね」
茜「梅の花の模様のものなんだけど、来る途中に見なかった…？」
A「(梅の花……)……うーん残念ですが…」
茜「そうだよねぇ……はぁ〜どうしましょう」
Aは頭をフル回転させるが、
その様な簪は今のところ思い当たらない
茜「…というか、また潜入調査かい？」
A「まぁ、そんなところです」
茜「その口元の布は？」
A「掃き掃除してて…あ、書類部屋って何処か分かります？」
茜「？廊下の突き当たりだけど…」
A「ありがとうございます。ついでに、簪も探してみますね」
茜「…良いのかい？何だか悪いね」
A「いえいえ…では私はこれで」
お辞儀をして歩みを進めるA
茜も見送り、仕事に戻ろうとするが
ふと思い出す先刻の台詞
茜「確か、頼みがあるって──」
振り返ったが、Aの姿は既になかった
──
尊奈門が向かうは地下牢
忍装束で素早く移動する
男「此奴、何処かで見た事あると思ったら、忍術学園の餓鬼じゃねぇか」
きり丸「それが何だ！」
男「仲間がこの間学園の近くを散歩してたら、塀の中から餓鬼共の声と手裏剣が満遍なく飛んできたもんで
さぞかし危ない目に遭ったらしくてな」
きり丸「あの時は授業中だったんだ！
立派な忍者になる為に、授業で手裏剣を使って当たり前だ！」
男「どこ狙ってんだよ！」
きり丸「ちゃんと的を狙ってる！」
男2「…なんか、口喧嘩してますけど」
男3「大人気ないなあ」
男「丁度いい、仲間の仇を取らせて貰うか」
きり丸「…！！」
男が割としっかりした木の棒を片手に
牢の扉に手を掛けようとしたその時──
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作者名：成瀬 | 作成日時：2022年7月25日 16時
