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心臓がゆるやかに音を立てる。
○
「出られなかったんじゃない。出なかったんだろ」
「…あ……その、」
「いや、謝らなくていいんだが教えて欲しい。
……俺、Aに何かした、か…？」
申し訳なさそうに鞄の肩紐を握り締める焦凍くん。
やってしまった。馬鹿だ、私。
とんだエゴイストだ。焦凍くんの為を思っているのなら、取るべき行動があったはずなのに。
……また、間違えた。
その感情が顔に出ていたのか、焦凍くんは慌てたように言った。
「違う、Aを責めてるわけじゃない。電話のことはいいんだ。ただ」
Aに嫌われるのだけは絶対に嫌だと思ったから。
目を見て言われたその言葉に自分の頬の熱が上がるのが分かった。
チョロい。いや、好きなのかもしれない。焦凍くんの、健気で真っ直ぐなところ。
恥ずかしくなって顔を背けようとすると、焦凍くんの両手が私の両頬を捕らえた。
わ、わ、逃げられない。どうしよう。
「……頼む。俺は、人の気持ちとか、分からない。お前が今何を思ってるのかも分からない。好きなんだ。好きだから知りたい。俺に言いたくないことかもしれないけど…話せるなら話して欲しい」
「……っ」
「…時間取らせて悪かった。また電話する。じゃあ」
またな。
そう言って帰っていった焦凍くん。
そんな彼によって固定されていた頬は解放され、冷たい空気が直に触れる。
好きだと言われた。
綺麗な好意が、擽ったいようで、痛くもあった。
(……焦凍くんの手、あったかかった)
走って来たのか。当たり前か。
時間の無い平日の朝にわざわざ来るなんて、どうにかしてる。
「………私も、焦凍くんの考えてること知りたいよ」
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作者名：- | 作成日時：2017年12月9日 6時
