天使だった幼なじみがハイスペックイケメンになって私を迎えに来た。 (ページ34)

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気付いた。

○

「轟くん、この人がAさんなんだね」

「ああ。俺の未来のお嫁さん「やめて恥ずかしい！！！！」悪い」

「いや～轟くん恋愛事興味なさそうに見えたのに……このこの！」

優しく笑いながら私に軽く会釈してくれた緑谷くんに、ケラケラ楽しそうに笑いながら焦凍くんをつつく麗日さん。

ああ、やっぱ、雄英でちゃんと友達できたんだ。

緑谷くんも麗日さんもすごく良い人そうでほっとする。

「……あ！！今日特売日なんだった！！！しまったァー！！！」

「あ、麗日さんもう行くの？また明日ね！」

「麗日、またな」

「うん！デクくん、轟くん、Aさん、またねー！！」

寮生活なのに特売日気にするんだ。買い溜めでもするのだろうか。

急げー！と女の子らしからぬフォームで全力疾走して行った麗日さんを見届けていると、焦凍くんがハッ！と思い出したように顔を上げた。

「忘れもんした」

「焦凍くん、いつからそんなに忘れ物キャラになったの……？」

「悪い、取ってくる」

そして、私と緑谷くんはポツンと校門に取り残された。

気まずいか気まずくないかって言われたら気まずいけど、不思議なことに緑谷くんは緊張しない。初対面の男子って普通ガッチガチになるんだけど。

ちら、と彼の方に目線をやると、目が合った。

慌てて話題を振る。

「緑谷くん、体育祭見てたよ。凄かったね！」

「あ、ありがとう…！あ、あの、Aさんは、轟くんの幼馴染みなんだよね…？」

「うん、そうだよ」

と言っても、再会したのは最近だけどね。

そう言うと、緑谷くんは少し迷ったような顔をした後、言葉を紡いだ。

「轟くんね、入学当初はトゲトゲしてたんだ。すごく」

「……うん」

「体育祭で左側使うようになってから、吹っ切れたみたいで、少し性格変わったんだ。クールなのは相変わらずだったけど、最近、すごく柔らかくなった気がする。
きっと、Aさんのお陰だと思うよ。
僕が言うのも変なんだけど、ありがとう」

「…………」

違う。

違うよ、緑谷くん。

焦凍くんを変えたのは、私じゃない。

……そうだ、私は

幼い彼を救えなかったんだった。

救えないまま、置いて行ってしまったんだった。