ノスタルジア 3 (ページ43)

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dt「新メニューのデザート。来週から出す予定なんだけど、良かったら試食してみて」

今にも泣き出しそうな虚ろな目で、佐久間は俺が差し出したラウールと同じ夏みかんのジュレがかかったパンナコッタを見て、そして俺のほうをやっと見てくれたかと思った次の瞬間‥‥

sk「りょお～たぁ～‥‥」

とうとう大きな瞳から大粒の涙が溢れだして、それは後から後から、止めどなく溢れ出てしまった

dt「落ち着くまで待つから、言えるタイミングで話して」

佐久間の背中を擦りながら、嗚咽混じりの彼にそう問いかけると小さく頷いてくれた

佐久間がこんなにも参ってしまうことなんてあっただろうか

彼の泣き顔なんてアニメの感動シーンで号泣するとこしか見たことが無い

佐久間はよく泣くほうだったけど、こんな泣き方、俺は知らなかった

dt「落ち着いた？」

sk「うん、ごべん‥‥。涼太の店、俺‥‥」

瞼も鼻の頭も真っ赤になってしまった佐久間が、まだ鼻声のまま、そう呟いた

dt「いいよ、緊急事態だから。こうゆう時、個人営業って良いよね？」

少し軽口な事言ってみたら、佐久間は少しだけ笑ってくれた

オープン間際の出来事だったから、俺はオープン時間を1時間遅らせる事にした

dt「で、何があったか話せる？」

そう聞いてみると、佐久間の目には再び涙が溜まり始めた

sk「阿部ちゃんと連絡とれない」

dt「えっ！？お前らにもそんな事あるの！？」

sk「無いよ！1度だって無かった。だから心配だし、不安だし、怖いんだよぉ」

顔を手で覆って、零れる涙を隠す佐久間

その痛々しい姿を見るのが辛かった

俺が知る限り、佐久間と阿部には特別な絆のようなものがった。一見全く違うタイプなんだけど

2人で居ることは当たり前で、自然で、それが絶対のような気さえしていた

だから2人が距離を置いてる事が信じられなくて

dt「阿部に連絡してみる」

居てもたってもいられず

厨房に置いてあるスマホを取りに行こうと、立ち上がった俺に、佐久間は腕を掴んでそれを拒んだ

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