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ab「あれ、ビールじゃないじゃん」
ラウールや康二の話から、いつの間にかカードゲームをやる事になった俺ら
でもカードゲームの類はルール覚えられないからって早々に逃げて来た俺は、4席あるカウンターの1席を陣取り
1人ライムサワーを特別に作って貰ってちびちび飲んでいた
nb「ああ、ビール飽きたし口の中スッキリさせたくて」
阿部ちゃんは烏龍茶の入ったグラスを片手に俺の隣に腰掛けた
nb「ゲーム混ざんねぇの？」
ab「うん、俺は頭良すぎて負かせられないからって」
nb「さすが銀行マン。数字強そうだもんな！」
そう言ってやると『そんな事ないのにー』と口を尖らせ拗ねた顔をする阿部
相変わらずあざといねぇ
ab「ねぇねぇ翔太はさ、めめって子がどんな子か気にならない？」
阿部が目をキラキラさせながら聞いてきた
この顔、昔俺と涼太が一緒に何かやってたり、ただ2人並んで立ってるだけで嬉しそうに目を輝かせていた
あの『推しを見る目』をしている
新たな獲物をロックオンしちゃったのね阿部ちゃん…
nb「あいっかわらず好きなー？そういうの…佐久間の入れ知恵か？」
ab「えー、何それ？偏見とか傷つくんだけど」
nb「思ってねぇだろ…」
ab「あははっ！でもさ、話聞いてた限り康二も満更じゃなさそうに見えるんだよね！
だからさー上手くいって欲しいなっていうお節介心が湧いて来ちゃうんだって！」
まあ、確かに阿部の言ってる事も分からんでもないけど
あんまり首突っ込み過ぎも良くないような…
nb「今はまだそっとしとけよ。
だいたい今日初めて会った奴に自分の恋愛事情の世話を焼いて貰いたいなんて思わねぇだろ？」
ab「うん…まぁ、そうだよなぁ…」
nb「『推し』は遠くから応援してやれ」
ライムサワーをグビっと流し込み、横目でチラリと涼太を見つめた
背筋の伸びた後ろ姿を、俺はまた愛おしく思ってしまう
(懲りないなぁ…)
俺もただの『推し』として思えたら、どんなに気が楽か…
ab「俺は今でも『ゆり組担』だよ？」
nb「早く担降りしろ。もう何にもねぇぞ」
ab「そうなの？」
意味深な視線を俺に送ってくる阿部
どこか期待した色を宿してる
俺は堪らず席を立った
nb「トイレ…」
阿部の目は誤魔化せねぇな…
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作者名：shiro | 作成日時：2021年9月16日 22時
