【文スト】やつがれと新米保育士！

レポート1　〜笑顔のないりす組〜 ページ3

4月8日

今日は仕事の始まりだ。
私の担任するクラスはいろんな問題がありそうだ。


その日は、与謝野先生の挨拶ではじまった。

与謝野「皆さん、おはようございます！今年度はみなと幼稚園と合併して、たくさんのお友だちが増えました。」

! そうか。合併したんだ！初耳。

与謝野「そして、新しい先生も来ました！皆さん、迷惑をかけないように！」

そして、式は終わり、私の担当クラス
りす組へ足を動かした。

りす組はいわゆる年少さん。

貴「おはようございます！私は今日からみんなの、先生になった、Aです！みんなと仲良くなりたいです！一年間、よろしくお願いします！」

実習通りの挨拶。楽勝。

そして念願の……

「「「よろしくおねがいします！」」」

き、来たあああああああ…！
この瞬間のために生きてきました！
神様ありがとう！

でも、その瞬間、一人だけ口を動かさない子がいた。一番前の席。出席番号1番の子だ。

貴「じゃあ、これから、みんなの名前を呼ぶので大きな声で返事してね！」

はーい、という園児達。
私の大学時代の知恵で、年少さんに自己紹介をさせるのは厳しいらしく、こうやって園児達を覚えるらしい。


貴「じゃあ、一人目……芥川龍之介くん！」

芥川「…………(無言)」

あー。やはり、だんまりしちゃった。
一番で緊張しているのかと思ったけど、あの子はあの子なりの感情表現の仕方があるのかな……？

貴「あ〜あ、一番がこんなだと、みんな困っちゃうな……でも、一緒に頑張って声出そ？」

芥川「…………！？(困惑)」

貴「もう一回！芥川龍之介くん！」

芥川「………………ﾊｨ」

蚊の鳴くような声で、ようやく絞り出したこの声は。
何よりの進歩。

貴「次！泉鏡花ちゃん！」

彼女もちょっと緊張気味だけど、

泉「はぃ………」

貴「ありがとう！じゃあ次………」


大分飛んで。

貴「次は、中島敦くん！」
ベージュがかった白髪の敦くんはみんなとは違って、

敦「はい！なかじまあつしです！」

貴「……！えらいね！自分のお名前も言えて！はいじゃあ次！夢野久作くん！」

夢野「はい。」

シンプル。

園児資料。
中島 敦
時々、虎になる。
芥川 龍之介
情緒不安定。喜怒哀楽は黒いオーブ？で表す。
泉 鏡花
化身作り出しちゃう。サッカーはやらせない。(大人の事情)
夢野 久作
何だかんだ一番危険。相手にできない。
これからの日々、私は、あの子たちの思い出になれたらいいな……と思う今日この頃。

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