最愛の悪役さん【ヒロアカ】 (ページ4)

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あれから私は、知らない大人たちの手によって、お風呂に入れられ、髪を切られ、食べ物を食べさせられ、そして知らない施設に入れられた。

どうやら私の身体は、怪我がとても酷くて、数ヶ月くらい入院しなくちゃいけなかったみたい。それに、突然の環境の変化に驚いた体が、色々拒否反応を示したりと、まぁとにかく大変だったよう。私はほとんどを眠って過ごしていたためわからないけれど。

ようやく体調が安定して、普通にたって歩けるようになったのは数ヶ月後。木の枝を覆う葉が、緑色からすっかり茶色くなって地面に落ちている頃合いだ。

病院から出ると、初めて会った男の人とはまた別の男の人が、真っ赤な車の前で私を待っていた。私を施設へと案内してくれるらしい。赤いレンガに黒と青が混ざった屋根の、大きな施設へ。大人たちが言うには、“コジイン”らしい。

到着したので車から降り、重そうなスライド式の鉄門を開けてもらい、敷地内へ案内された。

小さなレンガの囲いの中に、目が痛くなりそうなほど鮮やかな色の花々が揺れていて、赤色しか知らなかった私には新鮮すぎて吐き気がする。肌を撫でる程よい冷たさの風も、元いた家の生暖かくて息苦しい淀んだ空気よりも爽やかで、年中薄暗い部屋の中とは違い、さんさんと優しい陽の光を降り注ぐ太陽すら、私にはヒリヒリとしてしょうがない。汚いものに慣れてしまったこの体には、綺麗すぎるそれらは毒でしか無かったようだ。

顔色悪く俯きながら施設の中に入ると、老齢の婦人が出迎えてくれた。白髪混じりのふわふわとした肩ぐらいの長さの髪で、数箇所顔に刻まれている皺は、その人の優しそうな人格を上手く表現されている。しかし、私を見るなりそれが一瞬だけ厳しいものに変わったのを、私だけは気づいてしまった。

「ようこそ、夢見ヶ丘こども園へ。よく来たわね」

まるで小動物を扱うような声音の女性は、人当たりのいい笑顔で私と同じ目線にしゃがんだ。が、目が合った途端、何事も無かったようにそらされ、すぐに立って先を行ってしまった。

案内人の男の人が、「もうここまででいいね？」と聞いてきたので、私は首を縦に振った。“肯定”は縦、“否定”は横に振るんだと、つい最近教わったところだ。

私の言いたいことを汲み取ってくれた男の人は、最後に私の髪を触り、穏やかな顔で出ていった。