最愛の悪役さん【ヒロアカ】 (ページ18)

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黒く焼け焦げたゴミを箒とちりとりで片付け、騒ぎを見ていた野次馬たちは時間を気にして去っていった。掃除用具箱に使った道具をしまうと、緑谷さんは物言いたげに私を見つめていた。

「なんでしょう、」

「あの、さ。危ないことはやめなよ、」

「危ないこと」

「ほら、人に向かって刃物を投げたりとかさ」

予鈴がなりそうな時間なので、話しながら足を動かした。盗み見た時の彼の横顔は、よくわからない。

「もしあれが当たってたら危ないでしょ？怪我だけじゃすまなくなっちゃう」

「そうですね」

確かに私もあれに触ると、手が血塗れになることがあった。

「私は、怪我をしてても、問題ない、けれど、あちらは良く、ないと」

「そう言ってるわけじゃないよ！」

首を傾げた。だって、彼の言っていることはそうとしか捉えようがないから。

「その、ごめんね。言い方が悪かったよ。もしこういう事があっても、無視しないと。やり返すのは良くない。」

「それが、本当に正解？なのでしょうか」

「……きっと、正解ではないと思う。でもね、こういうのって虐めてる相手の反応を見て面白がってるところがあるから、無反応でいればつまんなくなっていつかはやめてくれるよ」

困ったように笑う彼は、所々くたびれた制服を着て、同じようにボロボロなリュックを背負っている。私が、知らないとでも思っているのだろうか、緑谷さんが爆豪さんにいじめられているということを。

……いえ、厳密に言うと違うのかもしれない。私とはまた違ったタイプのそれなのだから。

彼と緑谷さんは力関係に大きく差がある。それは"個性"が大きく関係しているとは思うけれど、何故かそれとは別の感情をぶつけているように私は感じた。どうしても緑谷さんは彼にとっては弱者でしかなく、道端に転がる小石も同然なんだろうと認識しているのに、あんなにも構うのはなんだかおかしい。幼い頃からの付き合いがあるにしても、ね。

現に緑谷さんと同じ立場の私も、つい最近までは見向きもされなったわけだし。彼がつっかかるのは、無個性だからだけでは無いのかも？

「もしまたかっちゃんがなんかしてきたら言ってね！僕で力になれるなら、いつでも助けに行くよ」

くたびれた服装でにっかりと笑う緑谷さんの笑顔に、一瞬誰かの笑顔が重なって見えた。あれはいったい……？