最愛の悪役さん【ヒロアカ】 (ページ16)

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「んむっ」

茶色のキューブ状のお菓子を、口の中につっこまれる。甘い香りを出しながら、舌の上で溶け始める。

「……あまい」

こんなに味が強いもの、初めて口に入れた。すると次の瞬間、鼻の辺りからぷつんという糸が切れる音がして、何かが勢いよく流れ出す。

「……！？？」

目が覚めるような赤い色……もしかして、鼻から出てる。慌てて抑えても、溢れてくるそれは、制服を鮮やかに彩った。

「黒霧ティッシュ！早く！」

「今すぐに！」

黒霧さんから大量のティッシュで鼻を抑えられると、だんだんそれが引いていくのが感じられた。それにしても、また制服を血塗れにしちゃった。まぁ冬服はもうかわいているけれど。

「はぁ……びっくりした」

ティッシュで顔についた血を拭っていると、脱力した死柄木さんが机に肘をついてため息をついた。

「……私の、お父さんを、殺して、しまった時より、血に塗れては、なかった、のに？」

「本当にな。」

「すみませんA……少量のチョコレートでも、あんなに鼻血が出てしまうとは。」

金色に光る細い目を更に細め、黒霧さんは謝った。こころなしか、黒いもやもやが萎れている。

「いえ……私も、食べたことが、なかったので。とても、おいしかった、です。」

でも、もう食べたくはないかな、という言葉は静かに飲み込んだ。冷めて冷たくなった甘い飲み物を飲み込むと、喉がスっと冴えて落ち着くような気がした。

「では、こちらのお菓子をどうぞ。クッキーならば副作用はでないはずです。」

「くっきー、」

差し出された薄い色味の丸いお菓子。ひとつをを摘んで口の中に入れると、欠片がホロホロと崩れ、唾液に溶け込んだ。甘くて、おいしい。柔らかい味がする。

「……これなら、食べれます。」

また、黒霧さんの目元が細くなった気がする。今度はちょっと元気っぽい……？

「死柄木弔、Aに上着を貸してあげてはいかがでしょう。」

「はぁ、なんで。」

「血塗れの制服で外を歩かれれば不審に思われるでしょう。それに、貴方の上着を返さないといけないという次会う口実ができます。」

「あぁ……なるほど。」

黒霧さんから貰ったクッキーを食べ終わると、肩に何かをかけられた。

「それ、着て帰りなよ。血塗れのまま帰るのは良くないってさ。」

「……昨日、血塗れで、帰りました、よ？」

なんだか、一瞬だけ体感温度が低くなった。