行ってらっしゃい ２ ページ16
『…う。』
どうやら言うことは違っても心配してくれていることは三人で共通のようだ。
…私が子どもだってことも。
『…分かった、気を付けます。千さんも兄ちゃんもお仕事頑張ってね！』
笑いあってから手を振って車を見送る。
岡崎さんの車は角を曲がって見えなくなる。
『……初めて、"行ってらっしゃい"って、言われた…。』
兄ちゃんたちと出会ってから、初めてが多くて忙しい。
でも、無意識に頬が緩んでしまうくらい、楽しい。
千さんが家に帰ってる頃に帰ろう。
そうしたら、「おかえり」って、言ってくれるかな？
そしたら笑って『ただいま』って言うんだ。
それで今日あったことを話して、明日は何しようかって考える。
そんな何でもない日常。
それが私にとって堪らなく幸せだった。
―――――
【千side】
「…ふぅ、」
…進まない。
譜面と向き合い始めてもう２時間は経つ。
ギターで頭に浮かんだ音を弾いては悩んでを繰り返している。
『…………。』
チラッと顔を上げると真剣な表情で難しそうな本を読むAが目に入る。
視線をAからパソコンに移し、まだ白が目立つ画面を見てもう一度息をついた。
Aがこのアパートに来てから１ヶ月ほど過ぎた。
Aは図書館に行って本を借りて読んで過ごしている。
毎日仕事にレッスンにバイトに飲み会と、忙しいモモが家にいる時間は短く、家で作曲をしている時間が長い僕はAと一緒にいる時間が増えた。
僕が家にいない時間は岡崎事務所にいるけど、この前事務所に行った時にAと凛太郎が仲良く(否定してたけど僕にはそう見えたからね。)話してるのを見てから、おかりんに凛太郎をAに近付けないように言っておいた。
凛太郎は好きじゃない。
Aは気に入ってるみたいだけど。
もう一度本を読んでいるAを見た。
僕が作曲している間は話しかけてこない。
本を読み終わっても、じっとギターの音に耳を傾けている。
気を使わなくてもいいと言うと、僕の音が好きだからと返ってきた。
…モモと同じことを言うんだな。
ぱたん、と本を閉じる小さな音が聞こえた。
赤とピンクの瞳と目が合う。
『……進まない？』
「…うん。まぁ、そうね。」
Aは本を読み終わったようで、何冊か積み重なった本の上に読んでいた本を置いた。
気分転換でもしようかと、適当にギターを鳴らす。
Aは楽しそうに僕の奏でる音を聴いている。
「…A、ギター弾いてみる？」
『え？』
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欅夏希 - とっても面白いです！感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています！お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (
レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます！！！ (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
聖(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：テル | 作成日時：2020年3月3日 13時
