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初めての、 3 【千side】 ページ1

矢島さんからの電話に出たモモが固まっている。

「……………………………Aが、喋ってるの?」

モモの口から出た言葉に目を見開いた。

Aが、喋ってる?
声が出るようになったのか?

周りが静かだから、スマホから漏れる音が微かに耳に届く。
これ、Aの声?

軽く魂の抜けかけてるモモから携帯を奪って電話に出る。

「もしもし、千だけど。僕も呼んで。」

『…ぁ、ゆき……さん?』

「っ!!」

ホントだ、Aが喋ってる。
初めて声を聞いた。
"さん"付けだったけど、名前を呼んでくれた。

「うん、そう。千だよ。…声、出るようになったんだね。」

『…うん、出た。』

そう言って照れたように小さく笑う声が聞こえた。

「そう、良かった、話せるようになって。可愛い声だね。」

『そう、かな?』

「うん、可愛いよ。…あ、怖い人来そう?」

遠くであの怖い看護師さんの声が聞こえた。

『ぁ、…ふふ。うん、矢島さん、怯えてる。』

笑って言うようなことじゃないと思うけど。
でも楽しそうなAの様子に安心した。

「…声、大事にして。……無理はしないでね。」

『…うん、あり、がと。千さん。』

モモが横で焦り始めたので「モモに代わるね」と言ってスマホを渡した。

『にいちゃん』と呼ばれたらしい。
…もう僕もお兄ちゃんで良くない?と聞くと、「ダメ!兄貴はオレ!」と言われてしまった。
シュンとすると慌てたように「ユキももうお兄ちゃんみたいな感じだけどね!」と言われて笑ってしまった。

楽しいな。
幸せだ。

僕は一人っ子だからよく分からないけど、妹ってこんな感じなんだろうか。
居てくれるだけで胸があったかくなるような気がする。
Aに何かしてあげたくなる。

妹よりは娘みたいな感覚もあるかもしれないけど。

Aの戸籍の件はモモから聞いた。
簡単にだけど、Aの立ち位置も聞いている。
戸籍問題が片付くまで、Aを守れる存在は僕達しかいないことになる。

守る。

…僕は守られてばかりだ。
万にも、モモにも。

モモが飲み会によく行くのだって、Re:valeのためだってことも、人付き合いが苦手な僕の代わりにモモが人脈を広げようとしていることも気付いている。知っている。

「千らしく、Re:valeらしく歌って。」
「ユキはユキのままでいいんだよ!」

守りたい。

出来るかな?
僕にも誰かを守れる?

いや、守る。
モモも、Aも。

もう絶対、手放したりなんかしない。

…離してやるもんか。

三人で→



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作品ジャンル:アニメ
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時

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