三人で ページ2
『…………。』
目が覚めたらまだ病室は薄暗かった。
時計を見ると朝の4時半くらい。
『……ぁ、あー。』
…良かった。声、出る。
昨日はなかなか寝付けなかった。
起きたらまた声が出なくなっているんじゃないか、出なかったらどうしよう、あんなに喜んでくれたみんなをがっかりさせてしまうかもしれない。
考えてたら眠れなくなって。
考え始めると不安は大きくなっていくばかりで、考え疲れたのか気付いたら眠っていた。
声を出そうとしても、喉の奥が閉まる感じはしなくて安心した。
ほぅ、と息をつき再び布団に潜っても眠気はやって来ず、矢島さんがやってくるまで布団の中でぼーっとしていた。
昼過ぎに兄ちゃんと千さんがやって来た。
ドアが開くなり「ッA!!!」と若干半泣きになっている兄ちゃんに、ビックリしつつも『おはよう』を言うと抱きしめられて号泣された。
千さんが「僕も。」と言いながら一緒になって抱きしめてきた。
ちょっと苦しくて、でも嬉しくて温かかった。
「…へへ、Aの声、可愛い!」
「それ、昨日僕が言った。」
「えっ!?もう言われてた!!?」
「僕の勝ちだね。」
「何の勝負なの!?」
「先に可愛いって言う勝負。」
『…ふ、あはは……』
二人のやり取りが可笑しくて笑うと二人とも私の顔を見た。
「「可愛い。」」
同時に頬を緩ませてそう言われて、なんだか恥ずかしくなって赤くなると再び可愛いと言いながら頭を撫でられた。
…安心する。
『ありがとう。兄ちゃん、千さん。』
自然と声に出た言葉に二人は笑って返してくれる。
「こちらこそ、A、ありがとう。」
笑いあって、千さんが持ってきたリンゴを食べながらいろんな話をした。
その後のリハビリにも付き合ってくれた。
足も回復してきて、今は少しだけなら一人で歩くこともできるようになってきている。
もともと足の機能は問題は無いからリハビリも時間はあまりかかってない。
もう少しで普通通りに歩けるようになるだろうと言われた。
「もう退院してもいいくらいだね!歩くのも問題無さそうだし。」
リハビリのお兄さんが言う。
「お兄さんもそろそろ退院の準備しておいてね。Aちゃんが歩くときに注意することとかまた教えないといけないから、できれば家の様子の写真とか見せてくれるとありがたいんだけど。」
「はい!分かりました!」
それからしばらく兄ちゃんとリハビリのお兄さんが何やら話をしている。
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
聖(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時