【アイナナ】短編集 (ページ23)

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環パパ　２ページ23

『大丈夫！むしろ蹴るくらい元気で嬉しいよ！』

幸せそうに笑うAにつられて、「そっか」と俺も笑う。

「とおちゃーん！きてー！！」

「おー、今行く～！」

今度はジャングルジムに登りたいらしい。
…てか、ボールは？

「…後で探さねぇと…。」

『あの子もお父さんに似て元気だ！…ふふっ、さっきまで泣いてたのにね？』

「なー、もう忘れてやんの。」

立ち上がって歩き出そうとすると『あ！ちょっと待って！』とAが言う。
鞄をガサゴソした後取り出したのは絆創膏だった。

『家に帰ってからちゃんと消毒しないとだけど…とりあえず貼ってあげて？』

「ん、分かった。」

Aの鞄、何でも入ってるな…。
王様プリンは入ってなかったけど。

「とおちゃ～ん！！はやくきてー！！」

「分かったって！ちょっと待ってろ～。」

Aに見送られて息子の元へ行く。
きっと、今が甘えたい真っ盛りなんだろうな。
俺はこんな感じで甘えられなかったから、思いっきり甘やかしてあげたい。

安心してな、って。
俺が守ってやっから。

苦しい思いも、悲しい思いも、誰かを殴る痛みも知らなくていいんだ。

無邪気な笑顔につられて、自然と俺も笑う。

「…よし！帰り、王様プリン買ってやんよ。」

「えっ！ほんと！！」

「ん。泣くの我慢できたご褒美。ちょっとだけ兄ちゃんになったもんな。」

嬉しそうに飛び跳ねる息子にそろそろ帰ろうと言うと、まだ遊びたいと返ってくる。
それでも宥めて手を差し出すと、小さな手が握ってくる。

数年前までは自分の子どもなんて、想像も出来なかったけど、こんなにあったかくて幸せなんだな。

家まで３人で手をつないで帰ろう。
そんで、３人でぎゅ～ってして寝るんだ。

「とーちゃんって、かーちゃんとぼく、どっちがすき？」

突然息子がそんなことを聞いてくる。
そんなん決まってんじゃん。

「とおちゃんは母ちゃんのことも、おまえのことも、世界でいっちばん好きだよ。母ちゃんの好きも負けねぇし、おまえの好きも負けねぇくらい、好き。」

「…よくわかんない。」

「どっちが好きとか、決められねぇくらい好きってこと！」