【ヒプマイ・男主】俺の隣の奴は今日も笑顔を振り撒いている

俺の隣19*独歩side* ページ20

「…行くな」


行かないでくれ。
俺はまだ、お前に伝えられていないことがある。


「…す、き」


『…え？』


「好き、好きなんだ…お、俺…お前みたいに言えない、から…」


あ、泣きそう。
視界が歪み始める。
なんて情けない。


「好き…A、好き…っ」


馬鹿みたいに好きと伝える。
伝え方なんてわからない。
ただ、胸から溢れるものをそのまま口にしているだけだ。


「俺から、離れるな…ッ」


この2週間がどれだけ長かったか。
どれだけAのことが頭から離れなかったか。


「A、A……好きだ、す…っ」


瞬間、ぎゅっと力強く抱き締められる。
ふわりと鼻をくすぐるAの香り。


「A…？…っう、ぐ…い、ででで…っ」


待て待て待て。
肺が潰れる。みしみし言ってるから。


「ちょ…っA…！」


『…っ、う…ぐす…』


「…」


…泣いてる？
え、こいつ泣いてるのか？


『…俺、本当に駄目かと思った…独歩と、話せないんじゃないかと思って』


「A…」


『そ、か…独歩、俺のこと…へへ…そっかぁ…』


嬉しそうな声音に胸が締め付けられるような感覚に陥る。
へへってなんだよおおおおおおお。
この感情をどうすれば良いかわからず固まることしか出来ない俺。


『独歩…』


離れたと思ったらするっと絡められる指。
目と目が合って何だか泣きそうになった。


『俺と、付き合ってくれますか？』


「……つ、付き合う…ます…」


『ブフォ…っ…付き合うます…ッ』


うるせええええええ！！！
変にお前が敬語使うからだろ！！！


『は、はは…っはぁ…』


「…ッ」


笑ってたと思ったらぼろぼろと涙を零すA。
クソ、泣くなよ…。


『…幸せ、俺』


視界が歪んだと思ったら頬を伝う温かい雫。
それは止まってはくれない。
まぁでも、今は良いか。


俺も、幸せ。

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