【ヒプマイ・男主】俺の隣の奴は今日も笑顔を振り撒いている

俺の隣14 ページ15

あ、駄目だ。俺が悪いのはわかってる。
でも、開いた口は言うことを聞いてくれなかった。


『独歩、俺のことそう思ってたんだな』


『俺が言ってきたこと、そんなふうに思ってたんだな』


本気で言ってたよ。
お前のこと好きだって、大好きだって。
全部、全部…お前に伝えるために。
伝わると良いなって。


『そもそも、独歩…俺のこと好きじゃないしな。無理矢理、俺がこんな茶番に付き合わせたんだし。ごめん』


違う、違う違う違う。
こんなことを言いたいわけじゃない。
頼む、頼むから…俺の口、止まってくれよ。


『…別れよう』


ぽろりと出た言葉。
自分でも何を言ってるかわからなかった。

独歩の顔を見ずに背を向ける。
そしてそのまま歩いた。目的もなく、ただ歩いて。


『は、はは……笑える』


こんなの自業自得だ。
全部、全部俺のせい。

別れようなんて。
そんな思ってもないこと口にして。

まぁ、でも。
俺から離れられるんだから、独歩にとっては良いだろ。

そうだ、そうに決まってる。
どろどろとしたものを抑え込んで、自分で納得させた。

家に帰っても何も食べる気が起きず、風呂にも入らずにベッドへ寝転んだ。


『…ッ』


零れそうになる涙をなんとか抑える。
くそ…。
なんでこういうとき独歩の顔が思い浮かぶんだよ。

赤くなってる顔とか少し照れてる顔。
むすっとした顔に笑ってる顔。
その全部が……


『…好き』


当たり前だろ。
独歩の全部が、可愛くて仕方ないのに。

このやるせない気持ちをどうすれば良いかわからなかった。
出てこようとするものを抑え込んで。

忘れろ、苦しいくらいなら。
そのまま固く目をつむり、俺は眠りに落ちた。

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