今日:32 hit、昨日:4 hit、合計:10,280 hit
小｜中｜大
◇12 ページ12
大野くんの背後に立って見た絵は。
まだ荒いタッチのぼんやりした誰かで。
でも、とっても優しい。
温かい表情をしているのはよく分かる。
「だれ？」
「・・・母ちゃん」
「そっか。そうなんだ。お母さんなんだ」
大野くんから見たお母さんは。
きっと、素敵な人だ。
「優しい人なんだね」
「なんで？」
「だって、あったかい目してる」
「ろくでもない人だよ」
大野くんが、黒くなった指先を拭って。
ほんの少し、口角を上げる。
「でもさ、どんなにろくでもない人でも、こういう、いつかの優しい面も思い出せるってことでしょ？」
「・・・」
「いいじゃん。それなら」
私は。
いくらお母さんの優しい顔を思い出そうとしても。
ぶくぶくって。
ぐちゃぐちゃな。
「気色悪い」って。
私を見た目ばかり浮かんでくる。
ぴーっ！って。
大きな音が響き渡って。
一気に選手たちがプールに飛び込んで。
水しぶきが上がる。
客席では、声を上げて応援する人。
喜ぶ人。
落ち込む人。
「いや〜恵体ですなあ〜」
とか言ってる人。
「なんかやだ」
「なにが」
ニノが、ああ？って顔して私を睨んでくると。
潤ちゃんがにやにやしてニノを見る。
「げひ〜ん」
「松本くん今何か言いましたー？」
「ねー、もうほんと、そういうとこだよ」
「ああ？」
「へんた〜い」
「潤ちゃん私はさんでるからって調子乗らないでよ、」
「あ、ばれた？」
「こっの、ちんちくりんが」
「いった！蹴らないでよ！」
って。ニノの方を見た時。
クラスメイトの久保多さんが、たまたま横を通り過ぎた。
「久保多さん！」
振り返った久保多さんが、私に気付いて。
メガネの奥のおっきな目を見開く。
「佐藤さん・・・たち、」
「なにしてんのー？」
「友達が・・・大会に出てて・・・」
「そっかー！うちらも絲ちゃんの応援なんだ」
「そう、なんだ・・・」
「席探してるならそこ座りなよー」
ニノの隣を指さしたら。
久保多さんはしばらく悩んでから座って。
「迷惑じゃない？大丈夫？」ってニノが話しかける。
「迷惑なわけないじゃん。ねー？」
「ほら、お前のそういうとこ」
「どういうこと？」
「強引に物事押し進めようとするとこ」
「ニノに言われたくないもーん」
へへって潤ちゃんに寄りかかったら。
潤ちゃんがとんって一回わざと肩を上げた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ネズム | 作成日時：2019年12月27日 22時
