第三話 ページ15
「そう、気をつけてね」
「あ、うん」
断じてこれは、友達の家に遊びに行ってくるね、とかいう会話ではない。
お父さんより早く帰ってきたお母さんにリアムが遠目で面倒臭そうに見守る中で、ドキドキしながら、お母さんに東の森に自由研究のために行きたい、とお願いをしてみた。
すると、お母さんは表情一つ変えずに、許可したのだ。駄々をこねる必要はなさそうだけど、いくらなんでも簡単に許可しすぎじゃないか。
「え? いいの?」
驚いて、聞き返すと、お母さんは料理の準備をしながら、不思議そうな顔をした。
いや、私がその顔をしたいんですけど。
「だって、行きたいんでしょう?」
こんなことなら、悩んでなくて良かったのに。あまりにも簡単に許しを得て、唖然とする私に、お母さんはテーブルのもの片付けておいてね、と告げる。
「え。あ、うん。
じゃあ来週くらいに出掛けようかな……」
テーブルの上にあるものをどかしつつ、テーブルの下にいるリアムを突く。
「ねぇ、いくらなんでもおかしくない?」
そう聞くと、リアムは溜息をつき、
「自分の国の伝統も忘れたわけ?」
と、吐き捨てるように言った。
伝統? 何それ?
豆鉄砲を食った鳩のような顔をしているであろう私にリアムが欠伸をする。
……どうでも良いけど、あなた欠伸多すぎません?
「王が王子から後継者を選ぶときに、旅に出してたやつ」
「え? そんなの聞いたことも……ある……わ」
そう呟くように言った私にリアムが何度めかのあくびをする。
「それが伝統なったんだよ。前世の記憶のせいで忘れたの?」
私は首を曖昧に縦に振る。やはり記憶は混在しているらしい。
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ふりかけカスタード - きゅうりが死因w更新楽しみにしてます! (2017年8月21日 13時) (レス) id: f6c6c4268e (このIDを非表示/違反報告)
ルピナス@桜飴(プロフ) - 従順なこいぬさん» 返信・更新が遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます、本当に嬉しいです! (2017年6月26日 21時) (レス) id: f79117ebd7 (このIDを非表示/違反報告)
従順なこいぬ - 面白すぎて、夜なのに思い切り吹き出してしまいましたw (2017年4月3日 22時) (レス) id: 05eb78a7ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ娘 | 作成日時:2016年5月30日 12時