江戸川乱歩に懐かれた【江戸川乱歩】

探偵とネコ ページ24

《乱歩said》(血などの表現があります。食事中の方はお気をつけください。)




Aが吐きそうな顔をして森へ走って行ったあと、僕は黄色いテープなんか無視して遺 体を目にした。





｢これは･･･｣






あまりに無残な光景に、流石に僕も胃から込み上げるそれを感じた。


Aはこの臭いをずっと嗅いでたってことは、この感覚を我慢してたのか？



･･･もっと僕を頼ってくれてもいいのに






｢まるで芸術作品だと思わないか？｣





突然後ろからかかった声に振り向けば、多分警察かなんかだろう男が遺体を顎で指していた。




誰、この人。




初めて会った。
前もここには来たことがあるのに。






｢そう思ってるような手口だね。ただの殺人事件よりタチが悪い｣



｢紹介が遅れた。俺はこの事件に配属された宮原だ。アンタが江戸川乱歩で間違いないか？｣





出された右手。
中指にはめられた指輪が鈍く光った。




僕はそれを無視して観察に集中する。





｢こりゃ、また面倒な探偵だな｣






遺 体は女性のもの。



白いドレスが血で真っ赤に染められている。
首は綺麗に切られていた。



人間の体を切り落とすのは相当な力が必要なはず。
じゃあ犯人は男か。女性じゃ無理だろう。
ま、異能力者なら別だけどね。



あと、遺 体の前後ろが区別できない。
首が無くなってるのが主な原因だけど、遺 体に様々な手が埋め込まれてるせいでどれが彼女なのか･･･
首がなくて、体中に生えているかのような手の数々。



芸術とでも言いたいのか。





それにしても、






｢ねぇ君。彼女の手はどこにあるのかな？｣


｢あー、右手か？それが分からなくてな。犯人が持ち去ったんじゃないか？｣





成程ね。




この遺 体には手が何本もあるが、それはどれも彼女のじゃない。
こんなの調べずとも僕なら分かるけど、





｢君さぁ。芸術作品を作りたいなら別のにするべきだったね｣


｢それはどういう意味だ？｣





男が僕を蒼い瞳に映す。





｢僕は確かに彼女の手は何処かと聞いた。けど、僕は一言も"右"だなんて言ってないけど？｣




男は顔色を変えない。




｢そりゃ分かるだろう。俺は警察だぞ？｣


｢まあ、それは言えるかもね。
でも、その指輪は君のじゃないよね。それは彼女のものだ｣





この時、初めて男が目を細めた。



空を写したような蒼い瞳を____

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