江戸川乱歩に懐かれた【江戸川乱歩】

ネコと猫 ページ18

電車に揺られて数十分。




やっとこさ人から離れられた。
新鮮な外の空気を目一杯吸い込む。



実はネコの異能力のせいで鼻が敏感になり、何故か人間の匂いを嫌うようになってしまった。
慣れた人とかは大丈夫だけど、初対面だとまずはその人の匂いを嗅がなければダメみたいだ。




不思議な事に探偵社の社員は大丈夫だったけど。
多分、乱歩さんの服に匂いがついてたお陰かな･･･？




だから電車からの開放感に胸が高鳴る。
これから事件現場に行くんだし、そろそろ気持ちの整理つけなきゃな。




スーハースーハーと深呼吸を繰り返していると、足元に何かが擦り寄ってきた。




『ひっ･･･！』




び、びっくりしたァ･･･




何かと思えば黒猫が一匹。




濃い蒼の瞳が私を見つめていた。
その濃さに思わず吸い込まれそうになる。






"ネコの異能力か。中々いいじゃないか"





『だ、誰！？』





突然聞こえた男の声に私は周りを見渡した。



けど、ここは人気のない駅。
いるのは少し離れたところで猫じゃらしを収穫している乱歩さんだけ。




それに、今の声は明らかに私の脳内に直接流れ込んできたもの。





"いい材料になりそうだ"





次に流れ込んできた声にハッとする。
まさか、この黒猫･･･？




『貴方、なの？』




猫は答えず、私の足に体を擦りつけて颯爽と走っていってしまった。





今のは、異能力なんだろうか。






そんな事を考えていたら遠くで乱歩さんが私を呼んだ。





猫も気になるけど、乱歩さん怒らせたらダメって国木田さん言ってたし･･･





『はーい！今行きます！』





猫が去っていた方に向いていた足を、ｼﾞｬﾘ･･･と鳴らしながら乱歩さんの方へと向けた。

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