転生先が乙女ゲームみたいなんだが 3【鬼滅の刃】

第佰参拾伍話 ページ38

………寒い、とにかく寒い。
というか寒いを通り越して痛い、まるで身体が凍てつくようだ。
吐いた息は途端に白く色づき、この場がそれだけ冷気に満たされているのだということを実感させた。

原作からの知識で、童磨の扇から出る冷気を吸っちゃいけないことはわかる。
分かってるけど……実際に吸わないようにするのは言うほど簡単なことじゃない。
普段のように呼吸を使おうとすればどうしても大きく息を吸い込むことになるし、逆に吸う量を極限まで抑えたら今度は動きが鈍くなる。

……決定打に、踏み込むことができない。




「うーん、さすが柱…といったところかな。
俺の血鬼術をかわし隙あらば頸を狙う……いやはや鬼狩りの女の子は強いねぇ」




そんなことを言いながらも私の振るう刀を軽々と避ける童磨には苛立ちが募って仕方がない。
あぁ、もう。さっさと頸を斬られて死んでくれないか。




「色柱様！あの……」
「分かってる、時間は稼ぐから」




私の言葉にカナヲちゃんがハッとするのが見えた。

カナヲちゃんの言いたいのは、おそらく童磨に取り込まれたしのぶのことだろう。
しのぶがその命を賭してアイツを殺そうとしていることは……前世で原作を読んだから知っている、というのは勿論のこと、しのぶからも直接聞いていたから知っていた。

悔しいけど童磨は強い。
たった数分やり合っただけで、私の体には至る所に血が滲んでいる。




「(きっと、私一人じゃ勝てない)」




ぐっと刀を握り、重力に逆らい振り上げる。
刀が童磨の頸を掠っても、その程度の切り傷は瞬く間に回復されてしまう。
アイツを殺すためには、しのぶの力が必要だ。

………貴女の覚悟は、絶対に無駄にしない。
もうこれ以上、殺させない。
だって言われたもんね、みんなを頼むって。

原作通り……アイツは、ここで死ぬ。
必ず、殺してみせる。




「色の呼吸 青色・水流硬波」




放たれた氷が頬を掠る。
痛い、冷たい。それでも退くことなく私は童磨へと向かっていった。
そこにカナヲちゃんや伊之助も加われば、流石の童磨にも隙が生まれる。私はそれを逃さないように……何度も、何度も刀を振るった。

そしてついに……その時は来る。
ボトリ、虹色の瞳が地面に落ちた。




「あれ？何だこれ……」




現状を理解できず、童磨が戸惑ったような表情を見せる。
……まぁ、顔がドロドロに溶けていて表情なんてわかりっこないんだけど。

そして私はその様子を見ながら、ゆっくりと目を細め口角を上げた。




「私の親友、甘くみない方がいいですよ」

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