第佰拾話 ページ13
「ここは漫画の中の世界でも私が書いた夢小説の世界でもないことが今回のことでよく分かりました。
だから……これからは私、推し活に専念しようと思います!」
「……誰の?」
「もちろん野一色さんの!」
頭を抱えた。
何を言ってるんだこの人は。
この世界には私たちが前世で夢中になった物語の登場人物が存在しているのだから、彼らを推すならまぁまだ分かる話だ。
しかし、夢小説の…それも悪役を推すなんて。
そしてそれを堂々と本人の前で宣言するなんて。
「いや、もっと推すべき人…いますよね」
「私には野一色さんだけです」
「ほら、貴女が攻略しようとしてた人達とか……」
しかし、天星さんはブンブンと首を振る。
いやいやいや、そんな全力で否定しなくても。
「だって、野一色さんが喋って動いてるんですよ!?
原作キャラたちはアニメがあったから動いて喋る姿も見られたけど、夢小説の中の存在の野一色さんは喋らないし動かないんです!
それが!今!目の前で!動いて喋ってる!」
ズイッ、と顔を近づけられる。
圧がヤバい、気迫が凄い。
推しに対する熱量を感じる。
それが自分に向けられているとなると……なんだかむず痒い。
「こんなに嬉しいことはありません!
夢小説を書いてる人なら誰しもが思うはず!
自分の作ったキャラが動いて喋ったならって!」
それは確かにそうかもしれないけど……
だからって堂々と推します!宣言されても。
私はアイドルでもないし、前世でも普通の女子高生だったから推されることに慣れていなくて戸惑ってしまう。
「だから……推させてください、野一色さん!」
じっと、キラキラした瞳で見つめられる。
うっ、顔が良い。さすがヒロイン、夢主ちゃん。
「もう、好きにしてください……」
超絶可愛い夢主ちゃんを前にしたら、それはもう私が折れるしかなく。
ため息をつきながら私は彼女に推される覚悟を決めた。
誰がこんな展開になると想像できただろうか。
遊郭での戦いで夢小説とか乙女ゲームとか口走って、"あー、これ転生者ってバレたな"。なんて思っていたのがもう遠い昔のよう。
天星さんの中での私は、"夢小説の悪役"から"推し"に大幅変更されたらしい。
マジでもう頭が追いつかない、誰かこの状況をどうすれば良いのか教えてくれ。
「あ、美華さん……って呼んでも良いですか?
推す推さない関係なく、野一色さんと仲良くなりたいです」
「………それも、お好きにどうぞ」
私の生活はどんどん平穏から遠ざかっていく。
またしばらくは、賑やかな日々が続きそうだ。
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セレーナ・ラフィーネ(プロフ) - ばなな( ?)バナナさん» コメント、ありがとうございます!完結後のことはまだ考えておりませんが、まずは本編を完結させるべく執筆していきますので…更新ペースはゆっくりかと思いますが、ご愛読のほどよろしくお願いします! (8月9日 11時) (レス) id: 50bf8bc3a8 (このIDを非表示/違反報告)
ばなな( ?)バナナ(プロフ) - いっぱい寿司...この続編とかでキメ学とか書いて欲しい...(ᵒ̴̶̷᷄ ᵒ̴̶̷᷅) (8月7日 5時) (レス) @page34 id: 0b7a4ff9a1 (このIDを非表示/違反報告)
セレーナ・ラフィーネ(プロフ) - あきらさんさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます!天星ちゃんはなんだかんだで私も好きなキャラです笑 更新ペースはゆっくりかと思いますが、これからもご愛読のほどよろしくお願いします! (7月29日 11時) (レス) id: 50bf8bc3a8 (このIDを非表示/違反報告)
あきらさん(プロフ) - 初コメ失礼します!!作者様の書く小説が好きです、このお話もめちゃくちゃ読みやすくて、感情とかがスっと頭に入ってきました!とくに天星ちゃんのオタク?っぷりなところや真剣なところなども好きです!作者様のペースで更新頑張ってください! (7月27日 20時) (レス) @page34 id: af4a079e32 (このIDを非表示/違反報告)
セレーナ・ラフィーネ(プロフ) - にゃーちゃんさん» ありがとうございます!愛ちゃんはもう別人と言っても過言ではないですね笑 更新はゆっくりかと思いますが、これからもご愛読のほどよろしくお願いします! (2023年1月6日 23時) (レス) id: 50bf8bc3a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セレーナ・ラフィーネ | 作成日時:2022年7月31日 19時