転生先が乙女ゲームみたいなんだが 3【鬼滅の刃】

第玖拾玖話 ページ2

「宇髄さん」
「……お、野一色。無事だったか」




炭治郎の教えてくれた方向へと進めば、宇髄さんはすぐに見つかった。
彼も、彼のお嫁さんも無事みたいでよかった。




「伊黒さんもいらしてたんですね」
「……まさか、お前もいたというのにたかが上弦の陸にこんなに苦戦したのか？」




伊黒さんがいたかと思えば早速ネチネチと。
……言ってくれますね。
もっと言ってしまえば、天星さんもいたんですけどね。
なんと柱が三人ですよ。
でもそれを言うとさらに面倒くさい事になりそうだから、ぎゅっと口を引き結ぶ。




「上弦の一番下といえど、強かったですから」
「そーそ、そこまで言うなら今度はお前が自分で戦ってみればいい」
「言われずともそうする。ところで野一色」




宇髄さんから逸らされた目がこちらに向く。
何かと思い首を傾げれば、ゆっくりと腕が持ち上げられこちらを指さした。
突然のことに、思わず目を見開く。




「お前は引退する、などと言わないだろうな」
「……え、」
「宇髄は引退するなどとふざけた事を言っている。
見ればお前の怪我は宇髄ほど酷くはない、ならばさっさと怪我を治し死ぬまで戦い続けろ」




……そっか、ここで鬼殺隊を辞めるっていう選択肢もあるんだ。
そしたら、私の望む平凡な生活に近づくのかな。
平和な生活を……送れるのかな。




「無理する必要はねえぞ、野一色。
お前は前から鬼殺隊を辞めたいって言ってたもんな」
「俺は認めない、ここで鬼殺隊を辞めるなど無責任にも程がある」




……できるのなら、前世のように平和で安心できるような世界で暮らしたい。
刀など握らずとも、生きていければとても嬉しい。
この乙女ゲームのような決められた物語の上を進む世界から逃げ出してしまいたい。

だけど……逃げ出すには、大切なものが多すぎる。




「……心配しないでください」
「！」




生きたいと思った、それと同時に……
誰にも死んでほしくないと思った。
原作になんて関わりたくないと思ってたけど、誰かの死を目の前にして逃げるなんて事もうできない。

我ながら、変に責任感が強い面倒くさい性格してるな…って思う。




「私は鬼殺隊を辞めたりしません。
最後の最後まで、戦い抜いて見せます」




平穏な生活を送りたいという思いは変わらない。
むしろ日に日に強くなるばかりだ。
だけど、ここまできたら幸せな未来のために。
もう少しだけ、頑張ってみようと思う。

第佰話→←第玖拾捌話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す