【オリジナル】十二天物語 (ページ10)

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九頁目ページ10

周りは静かだった
自分は肩を掴んだ友達を黒く細長い何かで振り払っただけだったが、他の襲いかかってきた人たちも体の至る所がまっぷたつに切れて動かなくなっていた。
時の止まった世界で動いていたのは、襲いかかってきた人たちと自分。
けれど今はその襲いかかってきた人たちも自分が何かをした所為で動かなくなり、動いているのは自分だけだった。ふと、下を見ると、友達の千切れた首が転がったまま、感情の無い目で自分を見上げていた。

『………っ！』

限界だった。激情のまま、声を張り上げて泣いた。

昔から、親とも友達とも違うことは知っていた。
それでも今を生きようとしていた。
けれどその願いはあっけなく壊れた。
そして自分は大切な友達をこの手で殺した。

様々な感情が混ざり合って、嗚咽となり出ていく。
しばらくすると戸惑うような気配と共に誰かが自分の肩に手を置いた。
自分は振り払えなかった。怖ろしくて。

『ダイジョウブ、ボク？』

その声におそるおそる振り返ると、人の良さそうなおばさんが心配そうに自分を見ていた。
そして改めて周りを見渡すと、日常になっていた。
時は、止まってなんかいなかった。

仲のいい友達の首が千切れてもいない
至る所に体を切られた人間の体が散乱してもいない。

あるのはただ、夕日の中一人で泣いている自分とそれを心配そうに見ているおばさんが一人だけ。

そして自分は今度こそおばさんの手を振り払って逃げた。
全ては悪い夢だと願って。

けれど、

願いは叶わなかった。
次の日、なんとか学校に行くと友達の席が消えていた。
それどころか、友達が存在してた証が無くなっていた。
友達は存在していなかった。
急いで、友達の家に行くと友達の親は「そんな子はいない」と言った。

とある事情でそうなると解ってはいた。
けれど、実際に自分に起きて、認めることは出来なかった。

……それからの自分は特定の親しい相手をつくることを止めた。