【リヴァイ】残酷で美しい世界に【進撃の巨人】 (ページ43)

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＃39 ページ43

馬で軽く駆けながら周囲を警戒する。
だが、周囲には巨人の気配はなく、思わず気が抜けそうになってしまう。

「……いいことなんだろうが、どうにも不気味なほど静かだな」

「そうですね。嵐の前の静けさでないことを祈ります」

「そうだな」

しばらくウロウロと見て回るが、巨人が現れる様子は一向になく、ついに伝令を頼まれた人間が「作業が終わったので帰還します」と荷馬車班からの伝言を伝えに訪れた。

「クソガキ、戻るぞ」

「はい」

いつの間にか、不調も全快し、頭の重みもどこかへ消え去っていた。
集合位置に戻った後は、全員がいることをすばやく確認し、すぐにローゼへと帰還すべく陣形が展開された。

しばらく馬を走らせていると、鼻先にしずくが落ちた。
周囲警戒の仕事をしているときから段々と雲行きが怪しくなっていたのには気づいていたが、まさか、このタイミングで振り始めるなんて。

「兵長。雨です」

「やはりか、霧が出なきゃいいが……」

「それもそうですね。霧が出ていると信煙弾が機能しませんからね。
霧が出たとして、それまでに壁までたどり着ければいいのですが」

「あァ」

　 ***

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿最悪だ。

壁まであと少しのところで霧が出てきてしまった。
幸いだったのは、霧が出る前に市街地に入り、陣形を畳めたことだろう。

「嫌な霧だな」

「ええ」

陣形を畳む少し前、通常種の巨人を数体見ているだけあって、余計に心配になる。
市街地だから立体起動には困らないが、霧では巨人がいつ現れるのか全く分からない。

「後方巨人数体迫ってきています!数不明!」

壁を目前にして一番聞きたくない声を聴いてしまった。
しかも、霧のせいで数が不明とくれば、余計に怖さは倍増する。
後方班は大丈夫だろうか…。

「陣形を畳んだ今、後ろに下がることも不可能か…」

リヴァイがつぶやく。
そうなのだ。この霧ではむやみに後ろに後退するのは得策ではない。
かといって立体起動で後退しようにも、巨人がいきなり目の前に出る可能性がある以上それも難しい。

「トップスピードを維持して壁まで走れ!」

「……聞こえたかジゼル」

「もちろん」

目の前に大きく口を開けたローゼの扉が見える。
逃げ切ることを考え、必死に馬を走らせるが、後ろからかすかに聞こえる叫び声に思わず体が反応した。しかし、手綱をぎゅっと握りしめることで、罪悪感と悔しさを押し殺した。